シュウゴアーツ米田の作品は「記憶」と「時間」をテーマに制作されています。モチーフが無名性から歴史的人物、そして歴史的な場所と移行していく中で、「記憶」と「時間」に対する米田の意識に変化はあるものの、切り取られたイメージには「直接写っていないもの」を題材にしている点で一貫しています。あえて美しく構図をとられた画面からは想像の及ばない、事実の物語が背景にある…このことで、米田はイメージを享受することが記憶をその地点へ置き去りにする、という危険性を示唆するのです。時間は絶え間なく流れ、歴史は書き換えられている事実を常に忘れないことが、記憶を風化させることなく真摯に今を生きることへ繋がるのではないか、と作家は問いかけているのです。
新作は「水」をライトモチーフに近隣の大国の思惑に翻弄されてきた歴史を持つハンガリー、そして「森」をライトモチーフにソ連から独立してまだ10数年のエストニアを撮影したものを発表します。共産主義時代の名残が今だ色濃く残る都市。かつて戦闘が繰り広げられ、ついこの間まで軍事基地として使用されていた半島。異なる政治システムの不要になったイデオロギーの残像を、米田は冷静に美しくフレームに落とし込みます。しかしその視線は熱く、そして秘められています。
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