ハウス オブ シセイドウ「アール・ブリュット」が美術史に登場したのは今から60年前、1945年のことでした。「加工されていない、生のままの芸術」という意味のフランス語は、画家ジャン・デュビュッフェが考案したもので、正規の美術教育を受けていない人びとが精神的な衝動に従って創作した絵画や、オブジェなどの様ざまな美的所産物を指します。
「アール・ブリュット」の作品の多くは、精神病患者や幻視者などにより制作されたものです。精神病患者が自発的に描くものや作るものに対し、19世紀末ヨーロッパの精神科医たちが医学的興味を抱いたのがはじまりです。20世紀初頭にはより深い美的関心を持った彼らの手によって作品の収集と本格的な研究が行われるようになりました。一見、単純な中にも自らの内面性を驚異的な緻密さで描いた作品など、その純粋で無垢な表現の数かずは、パウル・クレー、マックス・エルンストなど同時の前衛芸術家たちに大きな影響を与えました。
資生堂は、1991年日本で初めてこうした作品を紹介し、その後も展覧会を継続して開催してきました。今回は「アール・ブリュット」命名から60年という節目に、その原点を振り返り、新たな方向を模索すべく本展を開催いたします。
本展ではパリの非営利団体abcdコレクションの中から、59名の作家による80余点の作品を紹介します。abcdの創設者ブルノ・デシャルム氏が収集した作品群は、19世紀にさかのぼってその概念をたどる一方、21世紀の「アール・ブリュット」を追求する世界でも稀にみるコレクションです。
表面的な美しさや奇抜さの魅力だけでは捉えきれない、内面からほとばしるエネルギーが迫ってくる作品群。一つの新しい分野として芽吹いたこの芸術を、会場でご堪能ください。
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