ギャラリー・マキ松井清志は現代いけばな作家である。その松井の近年の創作の中心軸がいけばなへの回帰である、と記したら奇妙に聞こえるだろうか。あえてこう記したのは、現代いけばなが「いける」と「造る」をめぐって難問を抱えていることを示唆したかったからである。
一般には花を器にいるのがいけばなだと思われているが、現代のいけばなにはそうした常識が当てはまらない。器に「いける」いけばながあると同時に、他方で美術的「造形」に近い手法が加えられた作品があるし、時には美術作品と区別できないような作例も登場する。「いけるいけばな」と「造る」いけばなの共生、そうした一面が現代いけばなにはある。
いけばなへの回帰というより、いけばな文化の再検証といった意味で理解してもらった方がよいかもしれない。いける場の問題、花器のあり様、花材の選択、季節、展示期間といった諸問題の再検証である。それらのひとつひとつがいけばな人の美意識と重なっているだけに、見かけ以上に複雑な内容をふくんでいる。これまでに松井は諸問題を現代的な視点で検討し直すことでいくつかの回答を出し、新鮮な現代いけばな作品を生み出してきた。今回の松井清志個展ではそうした回答の一つが提示されるはずである。
-- (みずたにたかし 美術評論家)
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