photographers’ gallery広島は公園都市である。平和記念公園完成から半世紀たった今なお、広島を撮るということは、残されたわずかな痕跡から〈記憶〉を再構築していくことではなく、ヒロシマの惨劇を〈記念〉することでもない。作者は、確たる手がかりを見つけることができないまま、がらんとした公園の風景を撮る。生活の場として均質に写しだされた公園は、本来あるべき想起の場所としてではなく、むしろ恒常的な忘却の場として機能しているように見える。公園の〈存在〉において、そして記憶の〈不在〉において、広島という都市は、過去と現在が入れ子状となった時間を生かされているのではないだろうか。作者は写真を撮ることで、その時制を一気に横断しようとしているのかもしれない。ゼラチンシルバープリント、16×20インチ、約30点を展示。
観光 KANKO
「観光」がテーマの写真展。しかし、ここでは名勝らしい景観は選ばれてはいない。無名の海岸、草原、河岸、雪山などが撮影地となっている。自然の景観の中に、人物や人工物が無造作に配され、明らかに観光風景としての調和を欠いている。むしろ、人々の生活圏と自然との境界線上を行き来する旅行者の不安定な視覚を浮かび上がらせ、同時に、その写真を見ている「この場所」や「この時間」の感覚をも麻痺させる。
どこかへ向かい、なにかを一心に見上げる写真の中の旅行者たちは、わたしたち自身であり、あくまで自らと同一空間にある景観として、無名の土地は新たな観光地として発見される。
タイプCプリント、254×305mm、新作約30点を展示。
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