「昭和 - 写真の1945-1989 第3部 昭和30~40年代 - 高度成長期」展

東京都写真美術館

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「もはや戦後ではない」といわれ、高度成長期を迎えた人びとの生活は、華やかな近代化の一方で、冷戦、安保、公害など、暗い影が忍び寄りました。写真家の視点もリアリズム的に場景を捉える写真から、自分たちの主観をうつしだす情景へと変化していきました。本展では、転換期であったこの時代を、写真家たちがどう捉え、どう自分たちなりに表現していったのかをご紹介します。

【画像:「センチメンタルな旅」より荒木経惟 昭和46(1971)年】

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スケジュール

2007年08月25日 ~ 2007年10月14日

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Reviews

strsy: (2007-09-30 at 01:09)

猫なのか、しかし背中の縞々から推測すると虎だとも考えられる。よく見れば奥のほうには書きかけもある。

写美収蔵品で構成される『昭和 写真の1945-1989』シリーズの第三部となる「高度経済成長期」。本展のチラシには、道路に落書きをする子どもたちの姿を写した田沼武能の写真が使われている。

この「落書き遊びも危険になった」は、1959年に東京で撮られたものである。日本では1953年頃から乗用車の生産も活発化し、台数も急激な伸びを見せ始める。それに比例し道路の舗装も急速に進んでいく。「落書き遊び」のフィールドの増加は、同時に自動車による「危険」も孕んだものだった。そしてこの道路と自動車こそ高度経済成長の象徴でもあったのである(「落書き」と「危険」は後に公害として表出する高度経済成長の二面性をも象徴しているかもしれない)。

このように田沼の写真は「昭和」の一断面を理解するには非常にわかりやすいものである。それが本写真の魅力でもある。しかし、これだけでは本写真の魅力は片手落ちになってしまうだろう。

なぜなら、この説明では冒頭の「虎なのか猫なのか」の問題は解決しないのである。そこにあるのは「写真」としての魅力である。本展全体で考えても、展示されている写真は間違いなく、昭和史を理解するための魅力的な「記録」である。会場に訪れた年配の方々が写真を見て、それをきっかけに、思い出話を始める姿をたびたび見ることがあった。写真を前に想起される過去に心を動かされるのである。しかし、また、それと同時に、写真に向かう現在において心動かされる経験も生まれていったのではないだろうか。

本展は「昭和」を知るために、いい展覧会であった。が、同様に昭和に生まれた魅力的な「写真」を見ることができる場所でもあった。昭和の「記録」であり、魅力的な「写真」がそこにはあった。落書きが危険になったことは、戦後の社会の変化の1コマを示す。そしてそこには1コマを切り取る田沼がいたのである。田沼はどのような表情でこの光景を見ていたのだろうか。

さて、ここまで書いてきて、もう一度、写真に目を向けてみて気がつくのは、落書きをする一番奥の子どもの書きかけの動物の顔である。あれは、犬なのか、熊なのか、それとも…。真相は歴史の闇の中。きっと謎は解けないから魅力なのだ。

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