或は「song」のシリーズでは、杉戸の持っている「音」に対する感性、絵画におけるリズムの表現がよりクローズアップされます。水戸芸術館で展示された「two tree songs」では、大画面に立ち現れた2本の木が、それぞれ違う方法で描かれています。左側の木は、垂直線から成る幹の上に茂った枝の輪郭線だけが描かれています。背景にたたずむ大きな壁や上部の窓が透けて見え、鮮やかな色彩の線や鳥の羽のようなモチーフが、木というひとつの命から音符が溢れ出すようにその表面で躍っています。一方右側の木は、格子状の線から成る幹に、こんもりとした葉を思わせる緑色の面がのせられています。ここでもピンクやオレンジ、グリーンの様々な線が、雲のようにも見えるこの塊に軽やかな表情をつけています。この2本の木は互いに互いの呼吸を共鳴しあい、ステレオのように共振しているかのようです。両サイドにひかれたカーテンは背景へと溶け込んで行くかのように半透明化し、画面上部の緞帳はもはやその色をなくして見えるか見えないかぎりぎりの軌跡として描かれるだけです。
本展では、「two tree songs」から続く新作の大ペインティング4点、小ペインティング6~8点が出展される予定です。本展のタイトル「空への近道」は、杉戸がジャケットを手掛けるアーティスト、オトナモードのニューアルバムに収録された曲名からとられています。初日には、彼らのライヴも開催予定です。この機会に是非御高覧下さい。
まだコメントはありません