ラットホール・ギャラリー九〇年から〇七年に至る一六年間に撮影された、荒木経惟の花作品(モノクローム)を中心に、最新シリーズ「KAORI LOVE」(モノクロームにペインティング)をご紹 介いたします。
一九九〇年一月二七日。妻・陽子逝去。病室にあったコブシの花を撮影。以来、写真家・荒木経惟は花に向けてシャッターを切りつづけている。花々は、写真家との情交よりふたたび生まれ出で、見る者の記憶のドアをくぐりぬけ、刻々と変容を遂げつつ、彷徨いうつろう。想いの塊と化し、すでに形を喪った断片が、ひとつ、またひとつ、たちのぼりよみがえり、やわらかな光と、その襞々に棲みついた翳のなかで、ゆっくりと新たな姿を成していく。荒木さんの花は、あまりに美しく、生の営みにまばゆい輝きを与え、あまりにもの狂おしく、封印した傷を暴きだす。過去と現在とま見ぬ未来までが、たがいに溶解し工作し、深いカオスにからめとられる。ふとわれに返ると、せつないざわめきの余韻と、ふくよかな残り香が、の奥深く、繭のように包み込まれている。一枚の写真が、刹那をこれ以上ないほどに愛おしく魅せる。生(エロス)も死(タナトス)も、そのあいだによこわるおおきな幸せもちいさな不幸も、そこには、世界のすべてがある。二〇〇七年一月二七日、ふたたびコブシの花を撮影。
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