ラットホール・ギャラリー静岡県西伊豆に生まれたアーティストは、大学卒業後、シベリア経由でヨーロッパに渡り、以来、ヨーロッパを拠点として活動をつづけている。1978年、オーストリアのグラーツで、クリスティーネ・ゲッスラーと出会い、結婚。1983年頃から精神の病の兆候を色濃く見せはじめたクリスティーネは1985年、息子と3人で暮らしていた東ベルリンのアパートから身を投 げて自ら命を絶つ。それまでに撮影された、日常の営みは膨大なネガフィルムとして、アーティストの手元に残された。十年近い歳月を経て、あたかも1985年を境に時を遡るかのように、ファインダーにおさめられた亡き妻の病状とともに変容していった妻の写真の発表をスタートするのである。生命を喪った妻は、ネガフィルムの中に姿を定着され幾度も掘り起こされることによって、生きることで変容しつづけるアーティストと生前には起こりえなかったほどの振幅をもって共振し、常に新しい発見をもっとも身近にいたはずの彼にもたらし続けたのである。妻の「死」を背負うことで閉ざされるかに見えたアーティストの「生」の河は、妻の写真をたぐりながら自らの深い淵に向かいふたたび流れはじめたのかもしれない。その流れのたゆたいは、未来(生)と過去(死)の行き交う、おそらくは永遠に解きほぐすことのできない人の業の奥深さをまさぐりつづける、行き着く先のない旅のように思えてくるのである。
オープニングレセプション:6月29日、19:00~21:00
アーティストトーク:7月7日、16:00-17:30
古屋誠一、姫野希美(赤々舎)、本尾久子(キュレータ)
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