Anders Petersen(アンデルス・ペーターセン)は1944年スウェーデン・ストックホルムに生まれ、1966年から68年にかけてChrister Strömholm(クリステル・ストレームホルム)のもと写真を学びます。ハンブルグでのナイト・ライフを撮った『Café Lehmitz』や、刑務所に長い間住み込み撮影した『Fängelse』、精神病患者たちを撮った『Ingen har sett allt』など、ドキュメンタリー・スタイルの作品で知られています。
今回、発表する『Café Lehmitz』はアンデルスにとって原点とも言えるシリーズです。18歳の時、世界放浪の旅の出発点であったドイツ・ハンブルグの夜の町で、売春婦、アルコール中毒患者、ドラック常用者、服装倒錯者などに出会い、生まれ育った環境との違いにカルチャー・ショックを受けた彼は、スウェーデンで写真を学んだ後、67年ハンブルグに戻り、バーでのナイト・ライフを2年に渡って撮り続けました。時には社会の底辺とみなされるような人々に対し、アンデルスは哀れみや同情、ジャーナリスティックな視線ではなく、家族を見守るようにカメラを向けます。いかなる状況下においても自分自身の存在そのものを受け入れ強く生き抜く人々と共に過ごす事で、自身の存在意義を確かめようとしていたのかもしれません。それらの写真はシリーズ『Café Lehmitz』としてまとめられ、8年後に作品集として出版されました。その中の一枚《Lilly and Rose, Café Lehmitz, Hamburg》はトム・ウェイツのLP『Rain Dogs』(1985)のカバーとしても知られています。