日本民藝館版面に刻んだ図柄を紙上に摺り出す版と、石碑などに彫られた文字や模様を写し取る拓。絵や文字を「刻む」「摺る」「写す」などの行為によって、模様が間接的に表れる版と拓の技法は、直接描く絵画や書にみられるような個人性が薄れ、より工芸的な美の世界を生み出しました。
本展では、江戸時代に多くの社寺仏閣で民間に配られた仏教版画や護符などの御札類、石仏の拓本、中国の漢~六朝時代の石碑から写し取った拓本などを展示し、版と拓に表れた美の世界を探ります。
仏画はもともと肉筆によるものでしたが、手間を省くための下絵として、あるいは同じ図像を数多く作るために木版による仏画も早くから作成されてきました。近世に入ると、多種多様の仏版画が作られるようになります。これらは民間への大量の需要に応えるために、図様も大雑把で、簡略化された図像が多くなります。同じ木版を用いた浮世絵などと比べると、一見粗末なものにしか見えないためか、従来これらの仏教版画は忘れられてきた感がありますが、その厳かで神秘的な表現は、日本の版画史の中でも豊かな世界を示しています。またこれらは、仏教がいかに日本人の生活に深く浸透していたかを示すものともいえましょう。
拓本の技術は、中国・六朝時代に始まったものとされ、木や金石に彫られた文字や浮彫を紙に写し取ったもののことを言います。本展で展示する拓本は、中国の漢時代と六朝時代の石碑から採った文字の拓が中心となっています。この時期は、特に古格ある力強い書体を生み出した時期として知られています。そして、この時代に石に刻まれた文字が、長い年月の風雪にさらされ、さらに拓本として紙に写し取られることによって、原の碑文とは異なった美しさが生まれたのです。
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