東邦画廊前々回の東邦画廊個展からコンピュータを使ったデジタル・プリントに転じ、前回展からデジタライザーという装置により手描きの要素を何重にも加えた版画表現が、その後急速に成熟して世界第一級の水準に達したのがみとめられる。おりから海底油田の開発によるノルウェーの経済成長を背景に、同国の大銀行にサビエの全デジタル版画コレクションが設けられたのをはじめ、日本の地方美術館が財政難から購入を見送っているうちに、ヨーロッパやアメリカのいくつもの美術館が、彼の作品を争って購入しているのも当然だろう。戦争の主題を横田めぐみ問題を主軸に、<夢—暴力と犠牲者たち>に拡大するとともに、デジタル版画に手描きを加えた精妙な表現の両面からもたらされた「成熟」を、日本人こそ今あらためて真摯に味解すべき段階である。
[画像: 「天使と地上最後の子」, 74.5×58.6cm]
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