銀座メゾンエルメス1955年生まれのアラン・セシャスは、世界各地の美術館での特別展からパブリックアートの制作まで、幅広く活躍しているフランス人アーティストです。いたずら描きやコミックを思わせるようなネコのキャラクターや諧謔的な作風で知られており、また近年では抽象画に取り組むなどますます意欲的に活動の幅を広げています。展覧会という、すでに制度化されてしまった空間に、拍子抜けするようなオブジェを、あるいは挑発的ともとれる主題を浮遊させることで、セシャスは観客の視線とその解釈との距離感を巧みに操っているのでしょうか。
日本初となる今回の個展はセシャスの代表的な作品数点を中心に構成されます。「Les Somnambules 夢遊病者たち」と題された作品は、彼のシンボルでもあるネコたちが人間とほぼ同じ大きさの立体となって、会場内を徘徊するインスタレーションです。幽霊のように両手を前へと伸ばし、(白昼)夢に取りつかれたネコたちが、光の世界からそっとカーテンの向こうの暗闇に姿を消します。一見、無頓着、無造作に見えるその姿も、実は意識下の何かに確実に制御されているのです。「夜と昼」と題された本展覧会では、そのイメージを光と闇に、またモノクロの作品群に掛け合わせ、我々の記憶や感情、感覚を揺さぶります。ネオンやポスターで我が物顔に振舞うネコたちは、無言のうちに現代美術の枠のなかに我々を引きずり込み、偉大さと滑稽さの中で困惑する人間を置き去りにするのです。
静かに流れるモートン・フェルドマンの音楽、じりじりと白光りするネオン、そして絶え間なく続く夢遊病者のスパイラル。そこで昼夜は反転し、夜昼の只中にたたずむ眩惑は、いつの間にかネコと共犯者となっていくような快楽と危険を感じさせるのです。
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