山根英房(やまね・よしふさ)の新作"stand for the world"は、本を積層させるプロジェクトに基づいて、本やビデオ、写真などで構成されるインスタレーションです。プロジェクトは、友人や知人の部屋を訪れ、その人の所有する本に、山根自身の本を追加して、一本の柱になるように、床から天井まで慎重に積み上げていくというものです。なんでもないゲーム的な行為ではあるものの、記録を目にする人々は、不思議な感覚に包まれることになります。本来の意味とは異なる目的で使用されている書物たちは、やがてその部屋や、そこに住む人物について雄弁に語り始めます。部屋の様子との奇妙な調和や乖離。世界の中に投げ込まれ、そこで呼吸する一人の人間が、よすがとして身の回りに手繰り寄せた本たちは、彼らの世界そのものでもあるのかもしれません。また世界は、そうした人々によって構成されている、本来共有可能な要素などない幻覚なのかもしれません。