i.MIRRORは、ツァオ・フェイのアバター、チャイナ・トレイシーの半年にわたるバーチャルライフ内での放浪と出会いを綴った作品である。作品タイトル画面によれば"セカンドライフ内のドキュメンタリー"であるが、実際にはアバター達によって演じられ、緻密に構成されている。しかしフェイ自身が述べているように、登場アバター達とは偶然に出会ったもので、"セミドキュメンタリー"といえる。作品は3つに分かれており、セカンドライフのメトロポリス、消費主義的なランドスケープを鮮やかに切り取って見せるパート1、孤独な都会の地下鉄の駅での若い青年との出会いと交流を綴るパート2、そして静的で都市の孤独を感じさせるパート1、2と異なり、パート3ではセカンドライフの中で生を謳歌するアバター達の横顔と未来への希望、現実世界とバーチャル世界(RLとSL)でのアイデンティティとが合わせ鏡であるタイトルへの言及となっている。
ツァオ・フェイがセカンドライフについて語ったところによると、(Miguel Amado, Rhizome /James Wagner, New World Notes) "セカンドライフの約束するものなんて私にはわからない。私に取って,セカンドライフは古い世界のシステムに覆われた新しい世界。そして現実世界と並行する鏡のような世界。私はセカンドライフを批判しているわけではない。だって、セカンドライフは我々によって作られたもので、現実世界もセカンドライフも消費主義と拡張に溢れている。セカンドライフは人工的なデジタル世界だけれど、人々は現実の人々だし、全て人間世界と同じ。巨大なグローバルエコノミーが存在する実験場。資本主義の波が止まらないのと同じで、我々のユートピア的な共産主義への憧れも止まない。私たちは二重に生きるだけではなくて、一貫性のない存在でしょう。セカンドライフはその鏡で、ユートピアではなくイートピア(E-topia)だと思う。"