東京画廊+BTAP新正卓が本展で発表するのは、これまで手がけたドキュメンタリー性の強い作品とは対照的な、人間の視覚と写真の二次元性を検証する実験的構造の作品です。富士の樹海で撮影された一連のシリーズ『frame & vision -blessing in forest―』 は、一見、正方形の白いフレームが後付けされたように見えますが、注視するとフレームの白線はところどころ木の後ろを通っていることに気付かされます。さらに白線を追っていくと、このフレームが、樹海に白いゴム紐を張り巡らし立体の台形を描くことで生み出された、 原始林相手の巨大なインスタレーション(だましのフレーム)であることに首肯かされるのです。
新正は本作において人間の視覚特性と、立体世界を平面へと変換させる写真のメカニズムに着目しています。眼球において、光線が到達する網膜は平面であり、人間が実際に得ている視覚情報は、世界の二次元投影像に過ぎません。しかし、そのような単純な知覚とは別に、私たちが三次元の世界を見ているのは、脳が網膜上に投影された二次元像をもとにして、物体の立体的構造や位置関係を計算しているからです。つまり、私たち人間は過去の経験から得た観念によってモノを見ていると言えます。
写真とは、三次元の現実世界を四角いフレームで切り取ったものと言えます。この「切り取る」という行為は、現実世界に直接触れるような手応えを与える、きわめて身体的なものです。写真を撮る行為も、過去の経験・習慣などに規定される観念性を逃れられないのではないか。そのような問いを我々につきつけるため、新正は、写真が対象とする世界の内側に、白いフレームを置くことで、二次元の観念性をより強烈に示唆するのです。画面上で正方形に見えるフレームが、実は正方形ではなく、それこそが現実世界として存在している。それを示すことは、写真の虚偽性を表面化させる試みとも言えます。新正卓はこれらの実験的な取り組みによって、事物を視る行為と写真を撮る行為の抽象性を問題提起していると言えるのではないでしょうか。
トークショー 5月9日(土)15:00-17:00
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