WAITINGROOM現在東京を拠点に活動する武居は、大学卒業後にグラフィックデザインの仕事でマッキントッシュに出会ったことでデジタルによる表現活動を始めました。
武居の作品は、全てデジタル環境で制作されていますが、風景画を主なモチーフとするその画面は、一見すると古典的な油彩絵画の筆致を思わせるパターンで覆われています。しかし、いわゆる“手仕事”以上に高密度に見えるそのパターンには、デジタル表現の可能性に対する武居の挑戦が表れています。
「制作の動機として、デジタルから得られる“存在感”を求めています。何度も執拗に上書き・修正を繰り返すことで現れてくる存在感。非物質であるデジタルに物質的な感覚を生じさせるということです。」-武居功一郎
どんなに加工しようとも物質的には何ら変化しないデジタルイメージ。にも関らず、膨大な作業量を想起させる武居のデジタル筆致パターンは、そのフラットな出力画面との相反効果により、観る側に不可思議な印象を残します。また、モチーフとなる風景は“何か起こりそうな予感”を匂わせながらも前後の文脈が抜け落ちたまま静止したような、そうした奇妙な不安を感じさせるシーンとなっています。
物語なきシーンの中で、非物質的な何かに執拗に手を加えることで存在感を得ようとする武居の作品。それを私たちが生きる道標のない現代社会に照らし合わせることは、いささか情緒的に過ぎるかもしれません。しかし、その高密度な画面を前に立ち止まり、おぼろげながら思考を巡らせてみることは、変容しながらも輪郭を保とうとする私たちの存在そのものについて再認識する契機となることでしょう。
[画像: 「untitled」 (2009) ラムダプリント]
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