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黒田泰蔵 展

吉井画廊 1
終了しました

アーティスト

黒田泰蔵
禅宗は「不立文字(ふりゅうもんじ)」を標榜しながら、どの宗派にもまして言葉数が多い。己の悟ったところを世間に伝えるには言葉がいる。あーだ、こーだの解説がないと凡人にはわかってもらえない。だから古来、どの宗派よりも禅宗関連の書物が一番多い。

無の境地へ至って、真っ白になるべきなのに、言葉が渦巻いていて、禅宗は真っ黒だ。クロダ・タイゾーも真っ黒である。何を作ろうかとこだわり続け、考え続けて、削除した言葉の物原(ものはら)だらけで真っ黒。その人が、白と向き合うというのは、一つの必然だった。真っ黒な中から、どんどん不純物をとりのぞいていかないと白磁は生まれない。少しでも鉄分などがあると白くならない。

黒田泰蔵は、徹底的に言葉をすてた。そして白になった。だから、彼の白磁はまさに彼の言葉だ。無言だが雄弁。「心模手追(しんもしゅつい)」という。心で、心の中の形を模して、それを手が追いかける。ロクロ形成にこだわる黒田泰蔵の形は、彼の心であり、心の中からにじみ出した言葉である。しかし、白は恐ろしい。白磁は素の人間そのものが、最も端的に出てしまう。ただ真っ白で逃げ場がない。言い訳がきかない。フツーなら手のつけようがないのだ。

黒田泰蔵は、45歳を機にどっかりとそこに居座ってきた。大悟徹底といえばきこえはいいが、何か彼にとってはいいところらしい。白磁なら安心立命できるらしい。しかも、その作品が人に好まれるというのは素裸の人間がものを言っているからだ。作品にクロダ・タイゾーが印されている。黒田泰蔵は、白磁にとりついてからは楽しいらしい。伊藤の林の奥の奥の、崖っぷちに家を、しかも、自分で設計し、すがすがしそうだ。

「遊戯三昧(ゆうげざんまい)」という言葉がある。はっきりしたことは知らないが、字面だけをみて、「遊び戯れまくることか」と勘違いしてはならない。自分のやるべきことを真面目に徹底的にやり抜いた先にある境地だ、と大徳寺のえらいお坊さんが言っていた。結局、楽しければ幸せだ。遊ぶしかないではないか。その徹底した遊びの果てに黒田泰蔵の白磁はある。

スケジュール

2010年11月25日(木)〜2010年12月25日(土)

開館情報

時間
10:0019:00
休館日
日曜日、祝日
入場料無料
会場吉井画廊 1
http://www.galerie-yoshii.com/
住所〒104-0061 東京都中央区銀座8-2-8
アクセス地下鉄銀座駅より徒歩7分、JR・地下鉄新橋駅より徒歩5分
電話番号03-3572-5727
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