非凡なアーティストは、すぐれた審美眼を持っているものです。その才能は、たんに作品制作に発揮されるだけでなく、ときに若いアーティストを発掘することもあります。ニューヨークに着いたばかりの頃、友人もいなかった河井美咲は、しばらくユースホステルに泊まり、路上でスケッチブックに描いたドローイングを売っていました。とはいえ、興味を示してくれる通行人はほとんど皆無でした。ところが、ある日一人の女性が河井のドローイングを束で買い上げました。それが彫刻家のキキ・スミスだったそうです。河井の絵の魅力は、ほどなく他のアーティストやアートディーラーの間に広まり、2002年にはケニー・シャクター・コンテンポラリーで個展が開催されるに至り、『ニューヨーク・タイムズ』紙上で美術評論家ロベルタ・スミスに高く評価されます。さらに、翌2003年にはP. S. 1現代美術センター(現P. S.1 MoMA)で個展が開催されたのです。
河井の作品について語る際、必ずといってよいほど、「へたうま」という言葉が使われます。実際、彼女自身が、あるインタビューのなかで自作について「へたうま&コメディ」と言っています。その際、「へたうま」を英語で「good sense, bad technique(すばらしいセンスと下手な技術)」といい換えているのが面白いところです。
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