「project N 48: 佐藤翠」 展

東京オペラシティ アートギャラリー

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一昨年(2010年)冬から昨年春にかけて佐藤翠は、パリ中心部にあるレジデンス施設に滞在し、制作活動を行いました。《Carpet - Paris I - 》《Carpet - Paris II - 》と題された2点の作品はこのときに描かれたもので、綿布を木枠に張らず、直接壁に固定して展示されます。描かれているのが絨毯だということ、また、フランスから日本に持ち帰る際の利便を考えれば、彼女がこの作品をあえて枠張りしなかったことはごく当たり前のように思われます。
佐藤翠は、自分が好きな服、バッグ、靴などが並ぶクローゼットを描くことから出発しましたが、そこから展開して現在では、さまざまな靴が並ぶシューズラックや色とりどりの柄のカーペットなどをおもに描いています。カーテンや家具などに彩色を施したインスタレーションも発表していますが、いずれも生地や表層が大きな関心になっている点が興味深いと言えます。

彼女の作品を仔細に観察すると、全体的にはかなりラフなタッチで描かれているのがわかります。画面の全部を塗りつぶさずに支持体の綿布をそのまま余白として残し、また、大きな刷毛でさっと刷くように描いて臈纈染(ろうけつぞめ)のようなグラデーションを見せるなど、鑑賞者の視覚を存分に楽しませる魅力があります。奥行を強調して描いた作品もありますが、画面から感じられる遠近感は希薄です。さほど奥行がない収納スペースを描いているせいもありますが、それ以上に、作品の表現描写によるところが大きいでしょう。クローゼットの背景や床にあたる部分の色彩は再現性からかけ離れ、ほとんど現実にはありえない表現を見せています。色とりどりに描き分けられた服の色は、画面全体のバランスを確認しながら、個々の部分に必要な色としてその都度選ばれ、決められていきます。こうした配色の決定は、抽象絵画の制作と同じです。カーペットを描いた多くの作品が抽象絵画のような印象を与えるのも当然でしょう。クローゼットのなかの服、シューズラックの靴、カーペットというモティーフは、彼女が思いどおりに自由な色遣いによって画面を構成するための恰好の口実なのかもしれません。

もっとも、佐藤翠の絵画は、たんなる素材や物質のシステマティックな探求でもなければ、現実世界から完全に乖離した抽象的産物でもないことも事実です。彼女の作品には、パステル調の明るい華やかな色合いのものもあれば、抑制のきいた暖色系の控え目な色調のものも見受けられます。以前から気になっていたこの色遣いの際立った対照については、こんなエピソードがあります。夏、秋と続けて彼女の作品を見てくれた友人の母親から、こう言われたそうです。「この前の夏の個展では色も夏色だったけど、今回は秋色ね」。彼女自身もそれまで気がつかないうちに、制作時期の季節感が、自ずと作品に反映されていたのです。平面作品だけでなく、彼女が鏡、カーペット、カバン、カーテンなどをもちいたインスタレーションをしばしば手がけるのもそれと関係するはずです。佐藤翠が表現するのは、彼女自身が心地よいと感じられるようなきわめてパーソナルな世界であり、大きなストロークが身体性を強く感じさせる大画面の絵画もそうした親密な空間を実現するうえで不可欠なものに違いありません。

[画像: 佐藤翠 「Carpet - Paris I - 」(2011) アクリル絵具, 綿布 210.0×210.0 cm]

メディア

スケジュール

2012年01月14日 ~ 2012年03月25日

アーティスト

佐藤翠

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