「生誕120年記念長谷川潔展」

横浜美術館

終了しました

アーティスト

長谷川潔

横浜に生まれ、フランスで活躍した銅版画の巨匠長谷川潔の生誕120年を記念し、その創作活動の全貌を紹介する展覧会を開催いたします。

長谷川潔は、1891年（明治24）現在の横浜市西区御所山に生まれ、10歳までこの地で過ごしました。美術の道を志ざし、青年期には創作版画のパイオニアの一人として主に木版画を制作し、「聖盃」や「仮面」など文芸雑誌の装丁を手がけました。やがて銅版画の技術を学ぶため1918年27歳で渡仏。1980年に亡くなるまでパリに留まり、版画家として活躍しました。

長谷川は、独学でさまざまな銅版画の技法を研究しました。ビュランの硬質な線で種草の細部まで描き込んだ静物画や、ドライポイントの表情豊かな線を活かした清純な少女の肖像画など、長谷川の版画には、西洋の版画技法と日本的な美意識の融合を観て取ることができます。また、当時廃れていた古典技法のマニエール・ノワール（メゾチント）を再興し、漆黒の地に小鳥や草花、身近な品々を描いた静物画は、長谷川の深い精神性を伝える作品として、特に高く評価されています。

横浜美術館は、横浜とゆかりの深い長谷川潔の作品を、開館前から20年以上かけて収集してきました。現在、版画660点余りを所蔵するほか、油彩画7点、そして約1350点の水彩と素描・下絵を所蔵し、世界随一の長谷川潔コレクションとなっています。その中には、一つのモチーフを巡るヴァリエーション、さまざまなステート版（段階刷り）、刷り色の異なる作品、下図や素描などが含まれており、それらを通し、作品制作の過程や創造への真摯な姿勢をうかがうことができます。

本展では、初期の木版画から、渡仏後に修得したさまざまな技法の銅版画、晩年のマニエール・ノワールの作品群に至るまでを網羅的に紹介します。あわせて、油彩画、素描、挿絵本、そして版木や銅原版、道具類なども含め、200点余りで創作の軌跡を辿ります。生涯を通し、自然との共生、宇宙の神秘、そして生命の尊さを追究した長谷川潔の芸術世界は、私たちの心を静かに癒してくれることでしょう。

[画像:長谷川潔「花束」1926年　ドライポイント]

スケジュール

2011年4月29日(金)〜2011年6月26日(日)