1223 現代絵画90年代初期大ブームを巻き起こしたガーリー写真のアイコンとして、センセーショナルな注目を集めた写真家・長島有里枝は、その後「家族」を主題に据え、国内外で作品を発表しながら制作を続けてきました。彼女の作品は、「親しい人のポートレイト」「さりげなく切り取られた日常の風景」として認識されています。
今次展示される花の写真の多くは、彼女がスイスにあるVillage Nomadeでのアーティスト・レジデンシー・プログラムに参加した際に撮影されたものです。壁にとめた祖母の花の写真にインスパイアされるように、レジデンスの庭を歩き回り、様々な花をカメラにおさめました。彼女の作品は、その距離の取り方や眼差しの注ぎ方から、花は花であるというより、それぞれに顔をもった人々の姿を撮っていたのではないかというような印象を誘います。スイスの旅以降、意識して花の写真を撮るようになった長島は、イギリスの王立植物園であるキューガーデンを訪れ、花や植物を撮影しました。作品にある植物の「名札」は植物の名前や学名を書き留めたものですが、この札はものを認識するために必要な名前への素朴な疑問、あるいは20世紀以降のアートにおけるコンセプチュアリズムを示唆しているようにも感じることができます。
一連の植物に関する写真群は一見ストレートな写真表現の形をとりながら、一方で、長島の創作活動の根底に流れる「家族」というテーマを暗喩的に内包しているところに見所があります。今は亡き祖母が残した花の写真を眺めることでその姿を想い、カメラのレンズが花に向き合うことで、同時に人と向き合う感覚を重ねるという創造の飛躍が本展の作品を力強いものにしています。
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