安部典子「TIME LAG」

スカイ・ザ・バスハウス

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安部典子の作品は主にユポという、張りのある真っ白な紙を使用して作られます。その作品は単純な作業を湛然に繰り返し、気の遠くなるような時間を費やしながら形成されていきます。すなわちアーティストは、それ一枚では単なる平面性しか持ち得ない紙を一枚ずつ丁寧にカッターで切り抜いて形づけ、それを幾重にも重ねてゆき、地層のような流麗な造形を作っていきます。掌に載りそうな30センチ四方の彫刻を制作する場合、重ねた真っ白な紙の数は800枚から時に1,000枚を超えることもあると言います。

鑑賞者が安部の作品と向き合うとき、まず作品のその形態全体を認識し、そのオブジェクトの不可思議な存在感の成り立ちを探ろうと視点をさらに近づけた時、その物体が一枚一枚はほぼ厚みをもたない紙を積み重ねて作られたことに気づき、さらにその作業が特殊なカッターや機械を使ったものでなく人の手で湛然に切り取られていることに驚かされます。

その瞬間、目の前にある不思議な緊張感をもったオブジェクトは鑑賞者の意識の中で実体として浮かびあがり、その内なる創造性の強度を印象づけることとなります。作品はクラフトに近い単純な作業の繰り返しで作られていながら、一方アート作品としての「ボディ」の重みをしっかりと感じさせてくれます。その存在は「Fragile」(繊細)でありながら実のところ「Massive」(圧倒的)な本質を獲得しており、その表面の優雅に流れるようなモアレ状のパターンを小気味よく視覚に拾わせながら全体としては意識の中でその実体の確かな重みを抱えてみたような感覚を呼び起こしてくれます。

安部は作品の中に地理学的な言語を用い、それを積層させることで時間軸の感覚を軽やかに紡いでゆきます。精神の地図の上でのランドスケープは太古の記憶や未来への予感などを自在に折り込みながら人間のもつ時間軸の限界を軽く超越していきます。

また、安部が近年取り組んでいるキャビネットを用いた作品では、キャビネットは人体のメタファーとされ、その内側にカットした紙を積層させる上で、人体の中でも形として捉えることができない「こころ」や「命」のようなものを目に見える形で表現しているようにも感じられます。

安部の作品は日本では近年吉岡徳仁キュレーションによる「セカンドネイチャー展」(2008年、東京)にて展示されましたが、個展としては実に8年ぶりとなります。その作品は日本国内よりむしろアメリカを中心とした海外で評価され、知られてきました。アメリカの著名な個人コレクターのコレクションに収蔵されているほか、ホイットニー美術館のコレクションにもなっています。

"TIME LAG"- Linear-Actions Cutting Project 2011と題された今回の展覧会では、日本を離れニューヨークの地で制作を続けることで着実に評価されてきた安部の、ホームグラウンドであるアメリカの地と故郷である日本の時間軸と、地理の一目では捉えられない流れやつながりが主題に据えられており、新作のみが揃うアーティスト渾身の個展となります。紙を重ねた彫刻作品や壁面作品のほか、先達のアーティストへのリスペクトを込めてそれを切り抜いて彫刻にしたアーティストブックの新作も展示される興味深い内容となっています。

この度アメリカ美術評論家協会(AICA-USA)の選ぶ2010年のベスト展覧会のひとつとして、マリナ・アブラモヴィッチや蔡國強などそうそうたるアーティストと並んでテキサスでの安部の個展が選出されたこともあり、今後の飛躍がさらに期待される実力派アーティスト安部典子。長く待たれ続けた日本での本格個展にぜひご期待ください。

[画像:"A piece of Flat Globe Vol. 4", 2008, Cut on yupo, glue, 15.2 x 22 x 15.5 cm, photo : Mareo Suemasa]

メディア

スケジュール

2011年03月25日 ~ 2011年05月14日

アーティスト

安部典子

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