「αMプロジェクト2011 成層圏 Vol.2 増山士郎」展

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世界の紛争地帯についての漠然とした知識を持っていても、その緊迫した状況を我が身のこととして想い描くことは難しい。日本と直接関わりのないどこか遠い場所の出来事として聞き流してしまいがちだ。

増山士郎は、現在北アイルランドのベルファストに暮らしている。周知のとおり北アイルランドは、カトリックとプロテスタント、あるいはイギリスからの分離、アイルランド島全島独立を主張する「ナショナリスト」とイギリスとの連合維持を唱える「ユニオニスト」の根深い対立によって分断された紛争地帯のひとつである。

増山は、アーティスト・イン・レジデンスで滞在しているわけではない。フィールドワークの対象として自らすすんでこの地を選択したわけでもない。たまたま、縁あってここでの生活が始まったにすぎないのである。当初は、噴出する暴力に神経が強張り、作品を制作する余裕などなかったはずだ。増山にできたのは、ベルファストを彷徨いながら、街中を走る分断線を知らずに踏み越え、その度に身体を貫く緊張をひとつひとつ覚えこむことだけだった。

二つのコミュニティーの深い溝を目の当たりにすればするほど、増山は自分自身が第三者的立場にあることを強く自覚したことだろう。と同時に、こうした二項対立的に硬直した状況を相対化する視点を提示できるのもまた、第三者の特権であると気づいたのではないか。その時増山は、ベルファストに暮らす異邦人アーティストとしての社会的な役割を引き受ける覚悟を決めたのだ。衝突の現場から距離をとって冷静に観察するアイロニカルな態度を武器に、二項対立的な発想にズレを生み出し、亀裂を入れるという、ほとんど不可能とも思われる賭けに打って出たのである。

北アイルランドのような分断された社会においては、そぞろ歩き自体が、既存の境界線に対する密やかな撹乱行為となりうるだろう。双方のテリトリーを無化することを狙って、不躾な第三のテリトリーを、いわば虫食い状に広げていくこと。それが増山という迷い犬の戦術なのだ。
(鈴木勝雄)

[画像:「アーティスト難民」(2009)撮影:山本糾]

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スケジュール

2011年05月21日 ~ 2011年06月25日

オープニングパーティー 2011年05月21日17:00 から

アーティスト

増山士郎

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