加藤薫「骸骨の聖母 -サンタ・ムエルテ- 」

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加藤薫がメキシコという国の美術に魅せられ、通いはじめて40年近くになる。その間、大きな社会変動を何度も目撃してきたが、なかでも2006年末に発足したカルデロン現政権が推進する麻薬撲滅作戦と、それに抵抗する麻薬犯罪組織との間の抗争は、多数の一般市民をも巻き込むきわめて凄惨な事態を生み出し、痛ましさにたえなかった。都市部はいまも不穏な空気に包まれている。このような時期に、噂でしか知らなかった、非常に興味深い信仰集団と美術の現象に出会うことになった。それが、「骸骨の聖母(サンタ・ムエルテ)」である。「骸骨の聖母(サンタ・ムエルテ)」がもたらす奇蹟を信じる人々と、かれらが奉じる聖母像である。かつては犯罪者のカルトとされ、秘教的な位置づけだったこの信仰が、いまや信者300万人を超える一大勢力となっており、その図像は街路に溢れ出している。
政府の麻薬撲滅作戦により、官憲に追われた麻薬組織が全国に分散したことでカルトが拡大した、という分析も可能であろう。しかしそれだけでは説明しきれない。この現象は、「表社会」のシステムに何か大きな亀裂が生じ、民衆がもはや法もモラルも伝統的な宗教をも超えた、魂の救済の新たな方法を希求していることを示唆するものではないだろうか。
サンタ・ムエルテが美術現象として興味深いのは、伝統的な宗教美術に見られる図像規範というものがまだ無く、民衆の日々の信仰活動の中で新しい図像が考案され、取捨選択されながらいくつかの定型が残ってゆくというプロセス、それが今まさに進行中であることだ。そのプロセスを追うことには、いわば創造の現場に立ち会う面白さがある。しかもそれがプロの美術作家の仕事でなく、無名の民衆たちの創意工夫によるものである点も興味深い。多彩でキッチュな図像に込められた、正統な美術の世界とは無縁な民衆の大胆な発想は、世俗的欲望と生の活力に満ちており、着せ替え人形やゴス・ファッションと通底する要素も見られる。この「キモかわ」図像を信奉する心性の奥には何があるのかをこの写真展を通じて考える。
今回は、メキシコ美術研究者の加藤薫(神奈川大学教授)の著作『骸骨の聖母 サンタ・ムエルテ』(2012年3月刊 新評論)で紹介された写真約70点を展示します。

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スケジュール

2012年09月25日 ~ 2012年10月05日
休廊日: 10月1日

アーティスト

加藤薫

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