poster for 吉田夏奈 展

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吉田夏奈は身体を使う作家である。そう書くとまるでパフォーマンスの作家の様に聞こえるが、吉田の作品を見ていると作品に介在する作家の仕事が生々しく伝わってくる。山を歩き、崖を登り、海に潜る。そこで体験したことが作品となる。見たものを描くというより、身体を通した体験を再度体験として引っ張り出して表現するという方が近いであろう。従って、作品はある一点に立ち止まって視覚的に見えるものを切り取って描いた風景画ではない。全方位を見渡しながら、登り坂下り坂を全身で記憶する。作品はおのずと広がりを持った作品になるであろうし、単に一点に立ち止まって360度見渡したようなパノラマに留まるはずはない。むしろ作品が身体を使った表現であるならば、見る側の身体をも巻き込んだ体感する作品へと展開してゆくのも自然なことだったと思われる。2011年のオペラシティアートギャラリーでの展覧会では力強さ同時に繊細さも兼ね備えた線で描かれた山がギャラリーの長い壁面を床から天井まで埋め尽くし、見る側も移動しながら作品を体験する展示であった。
2012年のアートフォーラムあざみ野では壁面が90度折れれば、作品パネルもそれに合わせて折れ、空間全体が風景になっていた。それでも完全に空間に合わせて自由自在に対応しきれない堅いパネルが吉田の作風にはひどく窮屈そうに感じたのを覚えている。同年のLIXILギャラリーでは湖を描いた作品が床に置かれ、より絵画という表現から脱していく姿勢が伺われた。
今年の3月末にオープンした瀬戸内国際芸術祭2013では秋まで小豆島で吉田の作品を展示している。高さ4メートル以上もある巨大な円錐が逆さまに天井から吊るされている。観客が身を屈めながら円錐の内側に入ると一面の海の中の風景が飛び込んでくる。この作品を描くために吉田は幾度も小豆島の海に潜ったそうだ。潜るストロークが勢いよく描くストロークに切り替わっていると思われるほど作品は生き生きとしている。視線をずっと上げると円錐の上部に島が立体的に飛び出しているのが分かる。遠くて詳細は見えないが島はもはや四角いパネルに描かれているのではなく、輪郭にそって切り抜かれているのが分かる。
東京での個展としては1年振りとなる今回のアートフロントギャラリーの展覧会ではこれまでのパネルに描かれた作品だけではなく、パネルから脱してギザギザと輪郭を切り落としたレリーフ状の新作の森が並ぶ。輪郭はこの作家の絵画における線と同様、素描のような勢いのあるもので、作家のこれまでの製作の延長にある仕事だと納得できる。森はそもそも視覚的にその形状を全体として捉えることが出来ない。木々の中を進むと風景も変わる。そこには大きな木が倒れていたり、視界が急に開けたり、様々な風景が次々と展開してゆく総体が森と呼ばれるものであるはずだ。一本の木が独立しながら、かつ全体で森としても捉えられるように、吉田の作品も一つ一つの作品の形状が面白いだけでなく、設営しながら組合せを考えるであろうが、大きな森のようなインスタレーションになるのと思われる。私たち森の中を歩くよう様々な風景を見ながら、作家の介在によって広がるアートの領域、可能性がまだまだあったことを再認識できると思う。

メディア

スケジュール

2013年05月24日 ~ 2013年06月16日

オープニングパーティー 2013年05月24日18:00 から 20:00 まで

アーティスト

吉田夏奈

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