ショウケース / メグミオギタギャラリー 蝸牛あやは2001年に多摩美術大学彫刻科を卒業後、刺繍作家として活動を続けている。仏像を刺繍によって表現する繍仏として推古天皇の時代に広まった刺繍は、古くから人々の祈りを形にする手段として様々な装飾に用いられてきた。蝸牛の刺繍作品も、一針一針の祈りの集積から出来ている。誰もが空に舞う蝶の羽音や静かに息づく貝の呼吸に耳を澄ませ、 流れゆく薄雲の白と、時とともに色を変える空の青に心を奪われたことがあるはずだ。その瞬間、この目に映っている景色と感情の重なりを留めたいという願いにも似た祈りを縫い付ける ように、彼女は針を刺す。 その造形の細かさと美しさは、私たちに、子どもの頃に世界と対峙していたときの、まっさらな眼で作品に向かわせ、新たな記憶として各々の中に引き継がれていく。
小林賀代子は、2004年に上智大学比較文化学部(現国際教養学部)を卒業後、2010年に武蔵野美術大学日本画コースを修了した。小林の描く夢のような風景に咲き乱れる花や蝶は、幻想的でありながら、どこか懐かしい心象風景と重なり、遥かな記憶を呼び起こそうとする。蜃気楼に包まれたような淡い背景の中で匂い立ち、揺れる草花と、それに重なり溶け合うように乱舞する蝶々。その姿は生命の喜びを唱い、誕生の瞬間を待ちわびる染色体のようにも見える。眼を閉じると瞼の裏に浮かび上がるような、重力を感じさせないその世界は、まだ私たちが生まれる前、胎児のときに母親の羊水の中で眺めていた一番最初の記憶の風景なのかもしれない。
[画像: 小林賀代子「a bit windy day」(2013) φ30cm, Japanese paper, watercolor, acrylic]
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