ICC開館記念展「海市——もうひとつのユートピア」から15年。1997年の磯崎新による「海市」展は,当時まだ一般に浸透して間もなかったインターネットに着目するなど、「inter」をキーワードに、さまざまな相互の関係と、不特定の他者の参加によって作られる開かれた都市計画の提案として先駆的な試みとなりました。そして磯崎は、昨年のヴェネチア建築ビエンナーレにおいて、その概念や手法をあらためて発展継承するプロジェクトとして、2010年から現在まで進められている。中国最大の人口を持つ河南省の省都・鄭州の都市計画を舞台とした「中原逐鹿(Run after Deer!)」展を開催しました。「アーキテクチャ」という言葉は、かつては「建築」を意味するものでしたが、いまではむしろコンピュータ・アーキテクチャやネットワーク・アー キテクチャなどのコンピュータの構造設計、または社会構造を意味する言葉としても使用されています。インターネットがより日常化し、携帯端末よりつねにアクセス可能となり、ソーシャル・ネットワークが多くの人びとをつなぎ、そこに膨大なデータが扱われるようになっている現在。「海市」のコンセプトがどのように社会設計に展開されうるのか。これからの都市デザイン、アーキテクチャ論はどのようなものになるのかを議論します。