岡本光博「マックロポップ」

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[画像: 岡本光博「FG#546 Illegal Alien 2 」 (2010) ラリッサ(合成皮革)にアクリル]

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岡本光博(1968年京都市生まれ)による実に21年ぶりの東京での個展となる本展は、作家の動向を多年にわたり追い続けた学芸員、工藤健志(青森県立美術館)がキュレーションし、その憂いと諧謔に溢れる岡本ワールドを開陳いたします。

(展覧会リーフレットより抜粋)――岡本光博の作品はその意味で「現代」という時代性と真っ向から対立する。「誠実」ではないし、「重く」ないし、むしろ見る者を「小馬鹿」にしているようだし、あるいは「おふざけ」にしか見えないからだ。これでは美術業界内で過小評価されるのも仕方ないこと。なぜなら、評価とは言い換えれば価値づけ、権威化の行為であるから。そうした権威や力(あるいは常識という名の世論)に対する徹底的な懐疑が岡本の活動の根底にはある。
岡本の制作態度にはその活動の初期から全くブレがない。自らの経験や思考のあり方を立脚点とし、そこから浮かび上がる世界認識と、社会への疑問を直截に表現する。どこまでも「今の時代に生きるひとりの日本人(京都人)」という視点から作品は生み出される。他者やその集合体である社会にコミットするのではなく、外界の様々な事象を自らの思考のフィルターをとおして岡本光博という個の表現へと昇華させる。海外での作品制作においてもその立場は貫かれるが(ゆえに現地の人々には全く理解できない作品も平気で制作されたりもする)、それはどこまでも自己を他者と「相対化」する試みと言えよう。この一貫した相対化のまなざしこそが岡本作品を特徴づけるものであり、そこから「わたし」と「あなた」、「日本」と「世界」、「今」と「昔」、そして事象の「おもて」と「裏」といった関係性が多様な切り口で問い直されていく。そこに明確な答えは存在しない。相対化の中で生じる意味や認識の「ズレ」が提示されるのみである。
近年、ほんらい文化を保護するための著作権という制度を「利権」にのみ利用し、文化が文化を矮小化させている現代の状況を暗示させるかのような作品で話題となった岡本であるが、社会的なモチーフをぐっと自らに引き寄せ、そのモチーフが内包する多義的な諸相を(あるときは整理し、またあるときは混沌のままで)再構成して作品化する手法は岡本の作品すべてに共通する「根幹」と言える。相対化による「ズレ」は、見る者それぞれに驚き、笑い、怒りなどの様々な感情を誘発するが、そこでとどまるのではなく、一歩踏み込んで、自らの感情や解釈が何に由来するのかを考えてみることが、岡本作品を鑑賞することの醍醐味なのである。これまでの認識とは異なる、新しい視点がそこから見いだせよう。「パロディ」や「アイロニー」が許容されなくなり、「ユーモア」や「軽み」が批評の有効な手段として認知されなくなった現代社会において、岡本の作品は時代の閉塞性を穿つ視覚の快楽と、古来より連綿と続いてきたそうした知的な遊びがもたらす思考の快楽に気づかせてくれる。
例えば、「悲劇」は裏返すと喜劇に転化する。それを不謹慎と指摘するのはたやすいが、悲劇を消費して満足する人間が多いこともまた確かであろう。「真実」だってひとつではなく、解釈如何で変わるもの。ひとりの人間でさえ感情も思考も決して安定しないように、その無形の意識の集合体である社会をそう簡単に把握できるはずもないし、それは解釈した途端にまた別の解釈を生み出す。むしろ表面的には均質化の進む世界が、未だ多義的、重層的なものであることを岡本作品は示しており、見る者は世界との接し方をそこから考察することができる。そもそも文化とは知の集積体であり、それは引用の複雑な織物であるがゆえに、様々な感情を引きおこし、限りなく意味が生成されていくもの。その上澄みを掬い取って、きれい事にするのはたやすい。そんな純粋な白さを求めるのでなく、さらに表層しか映し出さない白い鏡に自らを投影するのではなく、混沌がひそむどろどろとした暗黒の中からそれぞれの光を見出していくこと。岡本の作品は、我々の意識が何に支配されているかを明らかにし、それぞれの出自と生活に根ざした思考と価値を形成するきっかけを与えてくれる。白い偽善よりも黒の偽悪。暗黒はすべてを飲み込むだけでなく、時として我々に「応えて」くれる。本展を「マックロポップ」と名付けた所以である。
工藤健志(青森県立美術館学芸員)

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スケジュール

2014年10月25日 ~ 2014年11月22日

アーティスト

岡本光博

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