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李傑 「The voice behind me」

資生堂ギャラリー
終了しました

アーティスト

李傑
リー・キットは、1978年香港生まれ。2008年まで香港中文大学美術学部修士課程にて学んだ後、国内外の展覧会に数多く参加してきました。2013年のヴェネチア・ビエンナーレでは香港館の代表に選ばれ、ウォール・ストリート・ジャーナルで「ビエンナーレ必見ベスト5のアーティスト」に挙げられました。これを機に世界中から注目を集めたリーは2015年には第12回シャルジャ・ビエンナーレ(アラブ首長国連邦)に参加、2016年にはゲント現代美術館(ベルギー)やウォーカー・アート・センター(アメリカ)での個展が予定されるなど、ますます精力的に作品を発表しています。

リーは、布やダンボールに描いた絵画、ライトやタオルハンガーのような既製品と絵画を組み合わせた作品、映像と絵画を並べた作品など、日常の一部と見紛うさりげない作品を制作しています。淡いパステル調の色使いを特徴とするそれらは一見、日常性を礼賛しているようにみえます。しかしリーの問題意識は、身の回りの社会や政治状況にも及んでいます。学生だった2003年には、香港政府が新型肺炎SARS流行のために外出禁止令を出したことへのささやかな抵抗として、自らがチェック柄を描いた布を敷いて友達とピクニックを行いました。また自宅のテーブルの表面を指でひっかき続ける様子を映像や写真でとらえた「Scratching the table surface」(2006年-2011年)には無意味に思える行為を通じ、高度経済成長以降、効率のみを追求するようになった都市への静かな批判を込めています。

リーは本展において不安、孤独、呼吸などをキーワードとしています。その背景には、政治や社会的格差へのフラストレーション、日常生活に伴うストレス、逃れようのない孤独などがあります。香港、台北、ロンドン、東京などリーが一定期間滞在したことのあるどの都市でも感じるものというこうした感情は、ネガティブに捉えられがちです。しかしリーは「悲観的であることは楽観的でもある」と言います。現状に押しつぶされることなく、したたかに生きていくには、このような柔軟な態度が重要となります。リーが「The voice behind me」という本展のタイトルについて、自分が慣れ親しんでいると同時に疎外されていると感じる声が常に背後にあり、その存在はほとんど耐え難いが、受け入れるしかないと言っているのもこのような態度の現れでしょう。閉塞感のある状況の中で深呼吸はできなくとも、呼吸を続けることはできる、そこにまだ希望はあるとリーは考えているのかも知れません。

本展では「Scratching the table surface」を含むこれまでの代表作数点の他、新作として、テキストを施した布に描いた絵画、ダンボールに描いた絵画、ギャラリーの空間に合わせた映像作品など約10点が展示されます。リーの作品は声高にメッセージを放つことはなくとも、洗練されたウィットを含みます。高度経済成長を経た今、転換期に直面する日本人にとって、時代と向き合うための示唆に富む展示にぜひご期待ください。

[関連イベント]
李傑(リー・キット) ギャラリーツアー
リー・キット氏が本展の作品について解説します(日英逐次通訳付き)。
日時: 6月6日(土) 14:00~14:30
会場: 資生堂ギャラリー
参加費: 無料、お申込み不要

スケジュール

2015年6月2日(火)〜2015年7月26日(日)

開館情報

時間
11:0019:00
日曜日・祝日は18:00まで
休館日
月曜日
入場料無料
会場資生堂ギャラリー
http://www.shiseido.co.jp/gallery/
住所〒104-0061 東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル B1F
アクセス東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口より徒歩4分、JR新橋駅銀座口より徒歩5分
電話番号03-3572-3901
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