鄭梨愛(チョン・リエChong Ri Ae)、鄭裕憬(チョン・ユギョン Jong YuGyong)、李晶玉(リ・ジョンオク Lee JongOk)の三人はそれぞれ1991年に兵庫、神奈川、東京で生まれ、朝鮮大学校教育学部美術科卒業後、鄭梨愛と李晶玉は研究室に在籍し、現在は三名とも東京で制作しています。 作家たちの共通点である「在日」という言葉は、その後ろにつくはずの「朝鮮人」が省略され、「日本人」の中に数多くの不穏な憶測を生むことは免れません。政治や社会の問題に根差している部分もあれば、言語や習慣など文化の問題から生じるものもあります。そして90年代に日本で生まれた三人には、両方の文化が混在しています。 他民族交流や多国間交流は人種を超えた共感を喚起する一方で、憎しみや争いを生むものですが、彼らは自らの過去と現在にそれらを内包した日々を生きているのです。しかし表現者であることを選んだ彼らは、環境や社会、歴史から受けた様々な知識や体験を、新たな視覚的イメージとして表すことを可能にしています。母校と隣りあう武蔵野美術大学の学生とも積極的に交流し、自分たちとは何かを共に思考してきました。「在日」であることから生じる社会的あるいは文化的な摩擦を意識しつつ、彼らは芸術と向き合います。
ところで、どんな要件にも適合する、汎用的な美術というものが存在するでしょうか。すべての人間にひとしく受け入れられる芸術こそ、芸術なのでしょうか? すべての人間にひとしく受け入れられる人間が存在しないように、美術もそのとらえ方によって様々な解釈が生まれます。その多様性に関心を向け、作品の核心を考えることが、新しい視野をひろげる装置となるのではないでしょうか。