身体の自在な動きが画面を満たしていく線描から自覚的な絵画制作を開始した飯島千恵ですが、まもなくその画面には独自の骨格を持った世界が立ち上がりました。視覚的なイメージと身体のリズムが呼び交わすようにして、抽象と具象のあいだを苦もなく往還する生命体のようなものが生み出され、時には山水画を思わせる雄大な屏風絵となり、また時には小さな銅版に繊細で詩的な空間を紡ぎだします。今回の個展タイトルである " Adam Kadmon "とは「地上の最初の人間」、男と女に別れる以前の神の似姿を意味するユダヤ教の言葉ですが、まさに彼女の絵画が生成する姿には、描くことと見ることが同じことの表裏として一体である絵画の原初の幸福が感じられます。