安部典子 「日々変容するカッティングの連続」

MAHO KUBOTA GALLERY

poster for 安部典子 「日々変容するカッティングの連続」
[画像: 安部典子 《LASERS-LITERATURE》 (2014) Cut on "Encyclopedia of the World Events” H.27.3x W.40.5x D.4cm]

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安部典子はニューヨークをベースにアメリカの国内外で作品を発表しているアーティストです。真っ白な紙を一枚一枚カットし、何百枚、ときには千枚単位で重ねていくことで作り上げる彫刻と、本や新聞といった既存のメディアにカッターの刃を入れ、独特の解釈を交えながら表現していく彫刻は、ニューヨーク近代美術館に収蔵されているなど国際的な評価を得ています。東京では5年ぶりとなる今回の個展では約12点の新作を展示いたします。
真っ白な紙を切り、幾重にも重ねてゆくことで生まれる新しい知覚の座標軸。或いは本や文字と向き合い、深く切り込んでゆくことで出現する不可思議な焦点の揺らぎ。手仕事のもつ身体性を横軸に、独自のナラティブで紡ぎ出す縦軸が安部典子の彫刻を特別なものにしています。

安部は2004年よりニューヨークにスタジオを構え、アメリカをホームグラウンドに作品制作に取り組みながら、国内外の美術館やギャラリーの展覧会を通して作品を発表し続けている彫刻家です。作品はニューヨーク近代美術館やホイットニー美術館等の著名な美術館にも収蔵されております。安部の作品では、1999年にスタートした「カッティングプロジェクト」、すなわち紙を一枚一枚鋭いカッターで精密にカットし、それを何百枚も、時には千枚単位で重ねていくことで二次元的な存在である薄い紙の重なりをソリッドで豊かな存在感を持った彫刻へと変容させていく手法が広く知られています。代表作シリーズとなっている「Flat Globe」シリーズでは真っ白でハリのあるユポという紙を慎重に切り抜き、幾重にも重ねることで両手で支えることができるくらいの大きさのキューブ状の彫刻を表現してきました。それぞれは一枚の薄い紙にすぎないフラグメンツが何百枚ものレイヤーを形取ることで表現される流麗な曲線は、それぞれがお互いの曲線を認識しながら時に共振し、あるいは変調しながら、まるで空から大地を見下ろした時に感じるようなランドスケープを作りだしていきます。レイヤーは時間軸であり、重ねられた時間軸が作り出す造形は、物語性を排除したシークエンスの中で何かが生まれる予感を内に秘めているようにも見て取れます。内在するエネルギーを抱え込んだ小さな立体は内から光を放つような蠱惑的な存在感をもって鑑賞者を魅了します。

安部のもうひとつの代表作に本や新聞、写真など、社会の中にある既存のメディアを媒体に、カッターで切り込んでいくというシリーズがあります。対象は時にアーティストブックであったり、あるいは社会や環境の文脈をはらんだ新聞であったりするわけですが、安部が自らの手の感覚を頼りに媒体に向かい合う時、そこには直感力があり、リズムがあり、そしてそのメディアを選択したアーティストの確かな意志があります。それらが互いに調和したりあるいは不協和音を奏でたりしながら、私たちを取り巻く世界の状況の変化や美術史との接続、個人の記憶と気づきといったフラグメンツを取り込んで一体化して、そしてそれをまたひとつずつ解きほぐすように複雑な地形を描いていくのです。たとえ媒体が紙という重力が希薄な存在だったとしても、身体性をともなった一連の創作の過程が生むものには確かな重さがあります。

“Continuous Cutting Altered Daily”、すなわち「日々変容するカッティングの連続」と題された本展覧会ではニューヨークのアトリエで数ヶ月に渡って制作にあたった12点ほどの新作彫刻が展示される予定です。シグネチャーである白い紙のレリーフ状の作品やキューブ状の立体作品に加えて、本のシリーズでは百科事典のページを彷徨ううちに見つけた言葉の森の中での偶発的な驚きを表現し、メープルソープの写真集を扱った作品では表現者が身体をメディアとする際に時に向き合うこととなる規制の壁を、そして中東の砂漠地帯を空撮したファザル・シークの作品集では非イスラム世界がイスラム世界との間に現在抱えている緊張感を、アーティスト独自の視点と知覚を羅針盤としながら、それぞれ目を見張るような想像力を内包する造形へと変容させていきます。ストイックに素材に向き合う膨大な時間が結晶となったような作品群はアーティスト自身の社会の関わりと覚悟を感じさせてくれる飛躍のプレセンテーションになることでしょう。

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スケジュール

2016年06月24日 ~ 2016年07月30日

アーティスト

安部典子

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