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谷口ナツコ 「止まれ 花がある」

アートコンプレックスセンター
終了しました

アーティスト

谷口ナツコ
その生き物は 
手を失う事とひきかえに美しい羽根を持つ事を選び
「美しいわたし」になりました。
羽根は、美しいけれどとても重いので、
飛ぶ事はできず背負って歩く事もままなりません。
それでも前に進まなくてはならないので
「美しいわたし」を運ぶための乗り物が必要になりました。
この美しさに見合うだけの、立派な輝かしい乗り物が。
幸いここには、金色に輝く新しい犬がたくさんいるので
一匹を捕まえ、またがり、行く先をこの犬にゆだねて進みます。
そうして運ばれているうちに、頭にはいつのまにか穴があいていて
脳みそのほとんどを盲目の猿に喰われてしまいました。
心みたいな形の臓器も、いつのまにか身体から落としてしまいました。
顔はもう、誰のものかわからなくなりました。

気付くと進むべき地面は、薄い氷の膜と残雪だけになっていました。
これまでずっと雪の下にあるはずだった大地は、汚れ、溶け落ちて、無くなって
氷の下の奥深くに、静かに怒りを溜め続けています。
地上の「美しいわたし」が重くなるばかりなので
氷だけの地面はもう耐えられなくなってきました。
金色の犬に乗った「美しいわたし」があと一歩進めば
地面には底なしの穴があいて、全てのみ込まれてしまうかもしれません。
穴を逃れてあと一歩進んでも、天から垂れ落ちる見えないロープで
首ををくくられ、自らの重さで締上げられるかもしれません。
まだ少しは残っている足も、もうすぐ金色の犬に喰われてしまう事でしょう。

「美しいわたし」は
足元に花をみつけて一瞬、立ち止まりました。
未来のためなどではなく、その花のためだけに足をとめました。
自らの脳みそや心からではなく、他者や天からでもなく
大地や花からでもない、止まれ という声がしました。
それは、この生き物だけが聴く事ができる声かもしれないのに
「美しいわたし」には、もう耳もありませんでした。

消え入りそうな地面にも、まだ花は咲いています。
溶け落ちた大地の中にも種は眠り、やがて芽吹くことでしょう。
また新しい春がきます。
会場: 2F ACT5

スケジュール

2016年11月15日(火)〜2016年11月28日(月)

開館情報

時間
11:0019:00
最終日は17:00まで
休館日
月曜日
備考
11月21日(月)休館
入場料無料
展覧会URLhttp://www.gallerycomplex.com/schedule/ACT165/taniguchi_natsuko.html
会場アートコンプレックスセンター
http://www.gallerycomplex.com
住所〒160-0015 東京都新宿区大京町12-9 2F
アクセス東京メトロ丸の内線四谷三丁目駅1番出口より徒歩6分、JR中央・総武線信濃町駅より徒歩7分
電話番号03-3341-3253
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