「ふたしかなその日」展

東京藝術大学 大学美術館・陳列館

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甚大な被害をもたらす震災や多くの難民を生み出す紛争などが絶えない不安定な社会状況の中で、写真や映像などのドキュメンタリーが今までとは異なる仕方で意味を持ち始めています。アイデンティティの検証、あるいは他者との体験の共有は、これまでフィクションや神話を媒介として行われてきましたが、昨今の想像を超えた現実の前にそれらは急速に力を失い、ドキュメンタリーがその代役を果たすようになりました。しかし、ここで立ち現れてきたドキュメンタリーは、報道やレポートといった中立的な記録とは異なり、極めて私的なパースペクティヴから世界を映し出すものです。近年、このような「極私的ドキュメンタリー」が、感情や心理の深いレべルでの新しいコミュニケーションを可能にするナラティヴのありかたとして機能しはじめています。
本展タイトルは、「Seize the day(いまを生きろ)」という慣用句に「uncertain(ふたしかな)」を付加したものです。経済成長が低迷し、安全神話が崩れ去ったいま、<そこにあるふたしかな日をそれでも生きる>というしなやかで力強い姿勢が模索されています。 大阪万博か?開催された1970 年、多木浩二や中平卓馬らは、『まずたしからしさの世界をすてろ』という挑発的なタイトルの写真集を発表します。同書において、彼らは客観的に世界を切り取ることを捨て、一瞬一瞬変わり続けるリアリティを皮膚感覚として捉えようとしました。そして同時代には、自らを「極私的写真家」と名付け、アレ・ブレ・ボケの世界を提示した森山大道、私的なアルバムを作品集として世に出した荒木経惟が活躍し始めました。かつて「たしからしさ」に別れを告げ、世界に対する自身のありようを映し出した中平卓馬、森山大道、荒木経惟の作品に見られる「極私的ドキュメンタリー」の手法は、現在のふたしかな世界でも参照点となるでしょう。
本展では、70年前後にスタイルを確立した彼らの作品群と、現在の不安定な社会状況に直面しながら制作している若手作家たちの写真や映像、ドローイングを一堂に展示し、たしかさに依拠することなくつくりだされる「ふたしかさ」の上に成り立つ世界を提示します。「ふたしかなその日」を通して鑑賞者は、流れゆく時代のなかで確かに受け継がれつつも揺れ動く「ふたしかさ」の息遣いを体感することになるでしょう。
監修:長谷川祐子(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科 教授)
共同キュレーター:内海潤也 / 黒沢聖覇 / 周浩 / 鈴木葉二 / 峰岸優香 / 宮内芽依 / 宮川緑 (東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻修士課程在籍)

メディア

スケジュール

2017年03月18日 ~ 2017年04月05日
開館時間: 10:00〜18:00、休館日: 月曜日 (ただし3月20日(月・祝)は開館し、翌3月21日(火)は休館)

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