渡辺篤 「わたしの傷/あなたの傷」

ROPPONGI HILLS A/D GALLERY

poster for 渡辺篤 「わたしの傷/あなたの傷」
[画像: 《プロジェクト「あなたの傷を教えて下さい。」》 2017年 (2016年-) 写真 ©ATSUSHI WATANABE]

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当事者経験をもとにした個人的なテーマを、社会問題にも接合させながら渡辺篤は制作を続けてきました。近年は、自身が過去に深刻な「ひきこもり」だったことをきっかけに作品を展開させています。現在、「ひきこもり」は一説によると日本に150万人以上居るとも言われています。しかしながら当事者の居る状況自体が、いわばブラックボックス化していることもあって、どこででも起こりうる問題であるものの、すぐにはその特効薬の見つかることのない切実な社会問題となっています。また近年では日本の文化的・経済的等の事情を背負ったこの「ひきこもり」という社会現象は、海外でも"Hikikomori"として語られ、注目されはじめています。
渡辺の近作《止まった部屋 動き出した家》(2014年) では、一畳サイズのコンクリート製の家型造形物の中に、1週間自身の身体を密閉してこもり続け事実上の身体拘束をしたのち、カナヅチとタガネを使って自力で脱出をしました。コンクリートを素材としたインスタレーション内でのこの過酷なパフォーマンスでは、山岳修行における「擬死再生(一旦死んで生まれ変わること)」や仏教由来の「内観」にも通じる”とらわれからの再生”を、自身のひきこもり経験に踏まえた形で表現しました。また、この際の個展開催に向け、実際にひきこもりを続けている当事者たちに向けて、インターネットを通じ、彼ら彼女らの暮らす部屋の写真を募集しました。その結果集まった約60枚を展示。会期中には渡辺自身も思いがけず、ひきこもり当事者が複数会場に訪れました。この展覧会はテレビ・雑誌・新聞など、メディアでも多数取り上げられました。今回は、この作品を再演した映像、インスタレーションを展示予定です。
また、《プロジェクト「あなたの傷を教えて下さい。」》 (2016年)でも、渡辺は自身のウェブサイトを用いて募集を行いました。これは個人的な心の傷についてのストーリーを匿名募集するプロジェクトです。現在までに約700件の当事者性豊かな文章が、日本語のみならず様々な言語で送られてきています。制作方法は、投稿文を円形のコンクリート板に書き、それをあえて一旦ハンマーで割って、陶芸の伝統的な修復技法である「金継ぎ」を応用し、修復をするという形式です。 ”心の傷はいつか光り輝く”という願いを表すその制作工程は、一枚が修復される度に渡辺のSNSを通じ、リアルタイムに画像が発信され続けています。
本展「わたしの傷/あなたの傷」ではこれら近年の作品群を多数展示予定です。さらに、自身の母親との合作も制作予定です。ひきこもりであったときの渡辺にとって、扉の「こちら(わたし)」側で持っていた傷は、同時に扉の「むこう(あなた)」側の傷でもありました。それに気づくことが渡辺がひきこもりを終えた理由でもあるのです。渡辺家の家屋のミニチュアを一旦壊し、当時を振り返る対話をしつつ、お互いで修復を試みます。
渡辺自身が過去に負った傷は、他者の傷に気づくことや、アートにおける発表活動と向き合うことで昇華されていきました。そうした自身の傷の修復の経緯をきっかけとして、「弱い自分・弱い誰か」が見殺しにされない社会を作るため、相互に寄り添う態度を、アートを通して社会に提案しています。

メディア

スケジュール

2017年08月04日 ~ 2017年08月27日
会期中無休

アーティスト

渡辺篤

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