隼田大輔 「Golden Sheep」

工房親

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2009年、私はパリからロンドンへ向かう列車に乗っていた。ドーバー海峡を抜け、イギリスの国土が見えてくる。夕方の霧が、幽霊のように海辺をさまよっていた。海にそびえる崖の上には閑散と木々が並んでいる。私は白く霞んだ景色の中に小さな点をいくつか見つけた。「あれは何だ?」と目を凝らすと、羊だった。私は生まれて初めて羊を見た。列車に乗っている一瞬の出来事だったが、霧に包まれた羊のいる光景の美しさは私を魅了した。

芸術にとって重要な観念である「美」という文字は、「羊」から誕生したという説がある。洋の東西を問わず、古代において羊は日常的な食料や衣服に使われるだけでなく、神への犠牲として捧げられていた。その重要性が「美」という抽象概念に結びついたと想像すると、私がイギリスで見た光景は「美の起源」と言えるのかもしれない。

日本において、羊が定着したのは明治近代以降である。それ以前にも羊の繁殖が試みられたが、寒冷地に住む羊が日本の温暖湿潤な気候に適応できなかった。天平勝宝時代 (749-757)の絵画に、正倉院の『羊木臈纈屏風』がある。ペルシアから伝わってきた絵画様式を模したものと考えられているが、私には、羊を見たことのない日本人が、脳内のおぼろげな輪郭を表現したものに見えてしまう。そして、その画像は私の脳内において、イギリスで見た霧に包まれた羊の記憶と重なった。この絵画が制作されて1260年あまり経過している。今後の劣化によってその肉体が消えてしまう前に、それに代わる羊を創造するのが私の役目であると、いつしか思い始めた。

[関連イベント]
トークショー「発見する風景、創る風景」隼田大輔×杉浦榮
ランドスケープアーキテクトとして風景デザインをしている、S2 Design and Planning代表 杉浦榮さんをお招きしてトークをいたします。
風景を発見する写真家と、創る建築家のそれぞれの目線から話を交えます。
日時: 7月14日(土) 17:00〜18:00
事前申込制(15人まで椅子の用意がございます。それ以上は他立ち見となります。)当日参加も可能です。

メディア

スケジュール

2018年07月07日 ~ 2018年07月28日 18:00

オープニングパーティー 2018年07月07日18:00 から 21:00 まで

アーティスト

隼田大輔

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