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山縣良和「人山人」
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山縣良和「人山人」
ゲンロン五反田アトリエ
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アーティスト
山縣良和
日本の現代美術とファッションが、ともに考えることを止めてしまったのはいつからだろうか。広告代理店が考えそうな「コラボレーション」でもなく、ネット上でバズらせるための話題作りでもなく、大きく、深く、厄介なテーマを共有し、のたうちまわりながら、ともに表現することを止めたのは、いつからだろうか。現在、山縣良和というデザイナーが不思議な存在感を放っているのは、彼の抱えているテーマが狭義の「ファッション」を大きく逸脱しているからであり、そのことを彼の「作品」たちが存分に語っているからである。2017年11月17日、山縣良和は東京都庭園美術館の前庭で「After Wars」と題するショーを開催した。周知のように、「戦後」というテーマは二〇世紀以降の日本の文化史、芸術史のなかで馴染みのものである。しかし、「After World War Ⅱ」でもなく、「Post War」でもなく、「After Wars(戦争の後)」と名付けられていることからもわかるように、山縣は馴染みのテーマに、ただ寄り添うようなことはしなかった。焼け跡、廃墟、千羽鶴、怪獣、キャラクター…… ショーは、日本の戦後文化史のなかで、繰り返し描かれてきたモチーフに満ちていた。しかし同時に、それらにはひとつひとつ、何かしらの「違和感」が仕組まれていた。そもそも、自身のブランドのショーで、日本の戦後史を「上演する」という振る舞い自体、彼の特異性を物語っているが、山縣はそれらをすべて引き受けた上で、大胆かつ巧妙な「書き換え」を行っていたように思える。なかでもとりわけ、大きな違和感と、謎めいた存在感を放っていたのは「山」というモチーフである。巨大な山に足がはえ、ランウェイをヨロヨロと歩く。もちろん、ショーで見せられる服が、通常着られる服を逸脱するのは当たり前のことであるし、いまさら「着られない服」を見せられて驚くような観客などいない。しかし、「巨大な山」は間違いなく、過激な演出や「着られない服」といった狙いとは無縁のものである。それは、山縣が考える「After Wars(戦争の後)」というテーマを担うモチーフ、コンセプトを、現段階で可能な限り形象化したものである。山縣によれば、山のモチーフは「再生」を意味していると言う。そう聞けば、直ちに柳田國男の「祖霊信仰」や、修験道に代表されるような山岳信仰などが連想されるだろう。もちろん、そのような連想もまた、「日本文化論」におけるパターンには違いない。しかし、にもかかわらず山縣の試みが興味深いのは、「戦後」のイメージを用い、その文化史的負荷を背負いながらも、そこから逸脱し、「戦後」の外側に想像力を繋げようとしている点である。その意味で「After Wars」は、日本の戦後文化史を引き受け、そして乗り越えようとする、山縣の新しいマニフェストのようであった。今回、カオス*ラウンジのアトリエで、山縣良和による「人山人(ひとやまひと)」と題した展覧会を開催する。タイトルからして、「After Wars」のショーから直接連続する展示になることは間違いない。それに付け加えることがあるとすれば、次のような理由がある。今回、私が山縣に声をかけたのは、もしかしたら山縣が構想していることは、カオス*ラウンジが近年取り組んでいる「日本美術史の再構築」というテーマと共通するのではないか、と思ったからである。すでに書いたように、日本美術史においても「戦後」というテーマは、呪いのように重く、つき纏い続けている。カオス*ラウンジは、「戦後」を忘却することなく、自分なりに引き受けながら、その外側に出ることを考えてきた。山縣の「巨大な山」を見て、もしかしたら、お互いの活動に補助線を引き合うことができるかもしれない、と思ったのである。展覧会は、山縣が自身で構成した展示を中心として、そこにカオス*ラウンジのインスタレーションを組み込む、というかたちで作られている。この展覧会が、ファッションと現代美術がともに考え、ともに表現する、その新しいサンプルになることを祈っている。
[関連イベント]トークショー
日時: 5月27日(日) 19:00〜21:00
ゲスト: 山縣良和、黒瀬陽平
定員: 20名
参加費: 1,000円
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スケジュール
2018年5月19日(土)〜2018年6月3日(日)
開館情報
休館日
イベントにより異なる
備考
開館時間 15:00〜20:00
入場料
無料
会場
ゲンロン五反田アトリエ
http://school.genron.co.jp/gcls/
住所
〒141-0022 東京都品川区東五反田3-17-4 糟谷ビル2F
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アクセス
都営浅草線五反田駅A6出口より徒歩4分、JR山手線・東急池上線五反田駅東口より徒歩7分
関連画像
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