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山本華 「西の旅、不在を遠くに見つめる」

関内文庫
終了しました

アーティスト

山本華
写真のジャンルは数多いが、スナップ写真ほど写真らしい写真の領域はない。だが、この芸術は写真にとって自明のものではない。じつは、わたしたち現代人が「写真らしい写真」と感じる表現は、機材の劇的な進歩とともに発展した特殊分野である。スナップ写真という芸術が普及するための工業的・技術的要件が整ったのは、今からたった94年前のことだ。しかも、その芸術を支えたのはひとつの画期的な製品である。1925年に発売されたライカ I (のちに広く普及した35mmフィルムを用い、高速シャッターを備えたコンパクトなカメラ。現代の一般的なカメラの原型といえる)が、このスナップ写真を一気に定着させたのである。現存する世界最古の写真とされるニセフォール・ニエプスの《ル・グラの窓からの眺め》が撮影されたのが1827年頃といわれているから、写真の発明からじつに約100年もの間、わたしたち人類は「写真らしい写真」を撮れなかったことになる。黎明期のカメラは巨大で、露光時間が長い。かならず何らかの台や三脚に据えて撮影する必要があったので、建物の水平垂直をきちんと出した風景画のような写真や、盛装して微動だにしない人物を写した肖像画のような写真が量産された。それらは明らかに絵画の模倣だった。だが、ライカ I のように小型でシャッタースピードが速く、手持ち撮影可能なカメラが普及すると、撮られる写真そのものが一変する。人々は気付いてしまったのだ。几帳面に水平と垂直を取らなくても絵になるし、カメラの存在を被写体に悟られる前か、撮影者と被写体がコミュニケーションを取っている最中にシャッターボタンを押してしまえば、絵画とは違う写真ならではの表現ができるということに。これは、わたしたち人類の視覚のモードそのものを根本から刷新する革命だった。今回関内文庫にて初個展を開く山本華(ヤマモト ハナ)は、スナップ写真を得意とする新鋭の写真家である。彼女は20世紀アメリカを代表するストリート・フォトグラファーであるゲイリー・ウィノグランドに影響を受け、彼が主張したスナップ写真の美学を現代的に再解釈しているのだという。一般に「標準画角」とよばれる50mm前後の焦点距離ではなく、現代のスマートフォンのカメラに近い画角の広角レンズを使って至近距離で撮影を行うのが60年代以降のウィノグランドの個性だった。たぶん、そこには写真家と被写体の一期一会のコミュニケーションがあったはずだ。そのコミュニケーションを自らの表現のベースに位置づけ、いわゆる標準域のレンズも用いつつ現代的なビジュアルにアップデートしようとする山本の写真の数々を、ぜひご堪能いただきたい。

スケジュール

2019年10月18日(金)〜2019年10月20日(日)

開館情報

休館日
イベントにより異なる
備考
開館時間 13:00〜18:00、10月18日は18:00〜20:00
入場料
展覧会URLhttp://kannaibunko.com/event/342
会場関内文庫
http://kannaibunko.com/
住所〒231-0013 神奈川県横浜市中区住吉町3-28 住吉町新井ビル408
アクセス地下鉄ブルーライン関内駅3番出口より徒歩3分、JR根岸線関内駅北口より徒歩5分、みなとみらい線馬車道駅7番出口より徒歩6分
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