「収蔵品展067 池田良二の仕事」展

東京オペラシティ アートギャラリー

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[画像: 池田良二 《Window under the midnight sun 白夜の窓》 フォトエッチング,エッチング,アクアチント,ドライポイント,メゾチント,ベラン・アルシュ紙に雁皮刷り 49.2 × 49.2cm 1988 photo: 田中俊司]

明日で終了

池田良二は銅版画を、自分自身を写し出す鏡としてとらえ制作し続けてきました。1947年に北海道の根室に生まれた池田は、武蔵野美術大学で油彩を学んだ後、1975年から独学で銅版画の制作をはじめました。比較的新しい技術であるフォトエッチングを主として、エッチングやアクアチント、ドライポイント、メゾチントなど、多様な銅版画の技法を用い、日常を超えた悠久の時間や、場所に残された人々の痕跡や記憶を表現しています。28歳で銅版画の制作をはじめた池田は、31歳の時に自身の版画工房「プリント・スタジオKAFU」を設立しました。たった3年でスタジオを構えるほど銅版画に打ち込んだのは、銅版画の表現に大きな可能性を感じたからですが、そのきっかけが銅という素材そのものに惹かれたからというのは興味深いことでしょう。銅は熱伝導率が高いという特徴を持ちますが、作品を通して自身の想いを伝えることを意識していた池田にとって、銅はコミュニケーションのツールとして魅力的な素材でした。また銅は腐食しにくく、古くから祭祀で使う銅鐸や銅鏡などに使われてきた歴史があります。和紙と同様に、耐久性の高い素材を扱うところに、時代を超えた作品制作を目指す池田の意識がうかがえます。池田の作品をじっと見つめていると、時が止まったような感覚に陥るかもしれません。事実、池田は過去から積み重なっていく時間を、目に見えるかたちで表現しようと試みてきました。写真を用いるのも、撮影した瞬間から過去となる時間を作品の中に永遠に固定しようとするためです。そうすることで、そこにいる人物、いたであろう人物の時間はその存在とともに作品の中に蓄積され、不在の空間に気配となって現れるのです。もうひとつ目をひくのは、びっしりと書かれた文字ではないでしょうか。画面の中の文字は、初期から多くの作品に描かれてきました。その文字は整然と並んでいるものの、版画のプロセスの中で腐食し、反転するために判読はできません。ではなぜ文字を書くのでしょう。池田は自分の手で文字を彫る行為そのものが時間の蓄積なのだといいます。それらを版に表すことでその時間を自分自身の記憶の層として重ねていくのです。池田の作品には繰り返し出てくるモチーフがあります。生まれ故郷、根室市の落石(おちいし)岬にある旧落石無線送信局の建物です。1985年、母の葬儀のために帰郷した際、落石岬を訪ねた池田は、すでに廃屋と化したこの構築物に、祖父が屯田兵として入植した出自を重ね合わせ、自らの原風景を見出しました。以来、池田はその構築物の内外の写真を撮り、そこに沈澱する時間と記憶を内包させた作品を作り続けています。建物内部の写真を使った作品には人物は不在だが、かつてここで過ごした人々の時間や記憶が気配となって漂っています。鏡面のごとく左右対称に構成された画面からは、池田が銅版画を自身の鏡ととらえる姿勢も伝わってきます。初期の作品にさかのぼると、インドを題材にした作品が数多く見られます。1973年、はじめてインドとネパールを訪れた池田が、生と死が共存する風土や暮らしに共鳴したのがきっかけでした。1970年代の作品には、レンズをまっすぐに見つめるまなざしが印象的な、インドの人々の写真をモチーフとしたものが多いですが、1980年代になると、インドやネパールの遺跡の図像と文字のイメージで構成された静謐な作品が多くなります。風化するかのようなその画面は、生死を超えた長い時の流れを感じさせるのではないでしょうか。インドでの経験は、若かりし池田に自己に向き合い、己の生地に立ち返ることを促しました。生と死を内包した悠久の時間を強く意識したのはその頃からなのかもしれません。だからこそ1985年の落石岬での構築物との出会いは、池田にとってその後の制作を強く決定づける運命的な出来事になったといえるでしょう。今回は、当館の寺田コレクションが収蔵するすべての池田良二作品を展覧しています。そこには池田が自分自身の原風景の中に作家としての方向性を見出した転換期に制作された作品も多数含まれています。今なお普遍的なテーマで制作し続ける池田良二の表現をぜひご堪能ください。

メディア

スケジュール

2019年07月10日 ~ 2019年09月23日

アーティスト

池田良二

入場料

[収蔵品展] 200円、未就学児 無料。企画展はイベントにより異なる

アートスペースの開館時間

11:00から19:00まで
金曜日は20:00まで, 土曜日は20:00まで
月曜休館
祝日の場合は開館し翌火曜日休館

アクセス

〒163-1403 東京都新宿区西新宿3-20-2
電話: 03-5777-8600

京王新線初台駅東口より徒歩5分、都営大江戸線西新宿五丁目駅A2出口より徒歩17分

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このイベントに行かれる際には、東京アートビートで見たとお伝えいただければ幸いです。

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