終了した展覧会・イベントです
[画像: ジャン=ユベール・マルタンの撮影による写真(1993)より]

奥村雄樹 「彼方の男、儚い資料体」

慶應義塾大学アート・センター
終了しました

アーティスト

奥村雄樹
ある特定の誰かについて、面白い人だ、あるいは退屈な人だと語るとき、私たちはその人物のさまざまな振舞いをひとつの平板なイメージへと還元し、本質として固定しようとしている。しかし、当然ながらその人物は面白い振舞いをするときもあれば、退屈な振舞いをするときもあるだろう。さらには、振舞いの興趣に関する判断は視点によって異なるはずだ。奥村雄樹による今回の個展の中核を成すのは、「彼」と呼ばれる誰かをめぐる9人の回想で構成された映像作品《彼方の男》(2019)である。そこで奥村は、ひとつのイメージへと固定化されてしまった「彼」の振舞いの束を、一連の手続きを通じて解きほぐし、写真乾板を重ねるようにイメージを多層化してみせる。つまり「彼」は、発語されるその局面においては常に単数の「彼」でありながらも、9人の発話を通じて複数の「彼ら」へと生成するのである。そのとき彼=彼らは、最も一般性の高い存在と最も具体性の高い存在とに引き裂かれる。私たちが出会う「彼方の男」は誰にでもよく似た彼=彼らであるとともに、誰にもまったく似ていない彼=彼らの分身である。さらに本展では、会期中のみ、同作に関連する3点の物品で構成された資料体が慶應義塾大学アート・センターのアーカイヴに追加される*。こうして、映像作品であると同時に口述資料でもある《彼方の男》とあわせて、アーカイヴにとって資料とは何か、資料を通じてどういった可能性が開かれるのかといった問題について、新たな思索が促されることになる。映像のなかで「彼」との記憶を述懐する9人がそれぞれに体現するように、私たち自身もまた、誰もがこの世界に仮設されたひとつの資料体なのである。
[関連イベント]
「彼方の男、儚い資料体」特別公開 
日時: 11月9日(土)
13:00〜 スクリーニング《彼方の男》(2019|HDヴィデオ|116分15秒)
15:30〜 ディスカッション「分身の審判」(奥村雄樹/南雄介/渡部葉子/久保仁志)
※イベント詳細は公式ホームページよりご確認下さい。

スケジュール

2019年11月11日(月)〜2019年11月22日(金)

開館情報

時間
11:0018:00
休館日
土曜日、日曜日、祝日
※展覧会によって開館日・開館時間が異なる場合があります。最新情報は公式ウェブサイトへ。
備考
開館時間 11:00〜18:00
入場料無料
展覧会URLhttp://www.art-c.keio.ac.jp/news-events/event-archive/themanwho-2019-1-2/
会場慶應義塾大学アート・センター
http://www.art-c.keio.ac.jp/
住所〒108-8345 東京都港区三田2-15-45 慶應義塾大学 三田キャンパス南別館
アクセス都営浅草線・三田線三田駅A3出口より徒歩7分、JR山手線・京浜東北線田町駅三田口(西口)より徒歩8分
電話番号03-5427-1621
関連画像

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