加茂昂 「境界線を吹き抜ける風」

LOKO GALLERY

poster for 加茂昂 「境界線を吹き抜ける風」
[画像: 加茂昂「境界線を吹き抜ける風のためのドローイング」(2019) 148×210mm 色鉛筆、紙]

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加茂は3.11の東日本大震災以降、“「絵画」と「生き延びる」ことを同義に捉え”ながら制作に取り組んできました。近年の彼は、広島の原爆、熊本の水俣病事件、そして福島の原発といった20世紀以降の日本が抱えてきた甚大な災禍を、現地でのリサーチや滞在制作とともに作品テー マの1つとしています。被爆者自身の筆による原爆体験の絵を模写すること、あるいは水俣病の被害者が懊悩の末に到達した“祈り”の境地に触れたことなどを通じ、加茂は1人の人間として、また画家として、そうした果てのないテーマに挑んできました。
ここ数年の加茂の活動を辿ると、“追体験”あるいは“共感”といった言葉が浮かび上がってきます。同じ国の中で起こった出来事でありながら、ともすると我々が「当事者」であることから目を逸らしてしまいかねないこれらの事象とどのように向き合うべきか? それは一個人が明確な解を導き出せるような命題ではないかもしれません。しかし加茂は、それらの被害者との直接の関わりの中で、自らが経験 / 考察してきた 時間を絵具というメディアに変え、絵画上に堆積させることでその問いと格闘し続けています。そのような時間の経過のなか、加茂の思考の変遷と同様に、彼の絵画におけるモティーフや描法もまた、静かな、しかし確かな変化を遂げてきました。
彼は本展の主題に「境界線」そして「風」という言葉を据えています。今回メインとなる作品群に描かれたフェンス(=「境界線」)は、福島の帰還困難地域において立入禁止エリアを示すために設置されているものです。このフェンスは加茂が福島在住の友人の一時帰宅に同行した際に目にし、これまでにもたびたび描いてきたものですが、今回はそこに“風”という新しい要素が加わります。格子状のフェンスをいともたやすく吹き抜け、“こちら側”と“むこう側”を行き来する風は、「隔離された」エリアといま私たちが暮らす領域の間に実は何の隔たりもないこ と、つまりは私たちの誰もが等しく「福島以後」の世界を背負っていることを示しているのかもしれません。
風という存在が内包するこのような象徴性について加茂は、詩人・谷川雁氏の「すべての物質は化石であり、その昔は一度きりの昔ではな い。いきものとは息をつくるもの、風をつくるものだ。太古からいきもののつくった風をすべて集めている図書館が地球をとりまく大気だ。風 がすっぽり体をつつむ時、それは古い物語が吹いてきたのだと思えばいい。風こそは信じがたいほどやわらかい、真の化石なのだ」(筑摩書房『ものがたり交響』より)という言葉を引用しながら語っています。
社会が抱える問題とその中に存在する個人、双方に目を向けながら実直な制作と問いに挑み続ける加茂昂の、現在地点と最新作品群を多くの方にご覧いただければ幸いです。

メディア

スケジュール

2019年04月26日 ~ 2019年06月01日
日曜日・月曜日は休館、4月30日(火・祝)から5月4日(土・祝)は開館

オープニングパーティー 2019年04月26日18:00 から 19:00 まで

アーティスト

加茂昂

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