終了した展覧会・イベントです
[画像: A Drunk Pandemic was created by Chim↑Pom and curated by Contact Young Curators for the 2019 Manchester International Festival. A Drunk Pandemic was commissioned and produced by Manchester International Festival and Contact. Photo by Michael Pollard.]

Chim↑Pom 「May, 2020, Tokyo / A Drunk Pandemic」

ANOMALY
終了しました

アーティスト

Chim↑Pom
ANOMALYでは、2020年6月27日(土)より7月22日(水)まで、緊急事態宣言解除後最初の展覧会、Chim↑Pom 「May, 2020, Tokyo / A Drunk Pandemic」を開催いたします。

Chim↑Pomによる本展「May, 2020, Tokyo / A Drunk Pandemic」は、その展覧会タイトルが示すとおり、2つのプロジェクトで構成されます。まず「May, 2020, Tokyo」は、世紀の祝祭イベントとなるはずだった東京2020オリンピックが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け延期となり、その後発令された緊急事態宣言下の5月、東京を舞台にしたプロジェクトです。常に街中でプロジェクトを敢行してきたChim↑Pomですが、「Stay Home」という自粛要請が謳われた首都東京で、改めてその瞬間の街に目を向け制作した作品によるインスタレーションです。

また、もうひとつのインスタレーション「A Drunk Pandemic」は、2019年イギリス・マンチェスターのヴィクトリア駅地下にある巨大な廃墟のトンネルで展開したプロジェクトに依るものです。これはマンチェスター・インターナショナル・フェスティバル(MIF)の一環として制作・発表され、ArtReview誌(September 2019)の表紙を飾り大きく特集された、日本では未発表のプロジェクトです。Chim↑Pomは、コレラで亡くなった人々が埋葬されたマンチェスターの地下(現在のヴィクトリア駅地下)の廃墟に「ビール工場」を設置し、オリジナルビール「A Drop of Pandemic」を醸造。コレラや酵母といったバイオ的なプロセスを可視化し、それらと下水道などの街のインフラにまつわる歴史的な関係を文脈とした、Chim↑Pomの「都市論」として展開されます。

マンチェスターは産業革命発生の地として知られますが、当時の急激な都市化による劣悪な衛生環境は、コレラの蔓延を引き起こした大きな要因であり、近代都市の上下水道の衛生改革などのインフラ整備は、コレラ対策としてなされたといいます。コレラ患者は老人や虚弱者、労働者、酒飲みなどの貧困層に偏っていたことから、裕福な層は彼らを道徳的に劣っている、すなわち「コレラ=不道徳」という考え方があり、その「不道徳な病気」を撲滅するには「不道徳な人間」の生活環境を、道徳的に向上させなければいけないーーー、衛生革命や公衆便所の設置は、そんな発想で行われたとも言われています。19世紀のコレラ流行時、一度煮沸してから醸造されるビールは、民衆の間では「水か酒か」という議論がなされたほど、生水の代替品として考えられていました。MIF会期中、Chim↑Pomが醸造したビール「A Drop of Pandemic」の直営店としてトレーラー型公衆便所を「Pub Pandemic」(トイレとしてもバーとしても機能する場)として開き、Chim↑Pom自らがバーテンダーを務めました。その「Pub Pandemic」のトイレから、下水道を延長し、会場内にセメント・ブリック工場「Piss Building」を設置。来場者の尿が混じった汚水(を消毒したもの)でブリックを量産、それらは最小単位の建築素材としてオーダーに応じ、マンチェスターの街路や家の修復材としても使われました。

このように「A Drunk Pandemic」は、ビール醸造所、パブ、トイレから下水道を経由して工場、そして街中まで及ぶ壮大なプロジェクトでした。産業革命を引き金にした資本主義は、19世紀に多大な犠牲を出しましたが、およそ2世紀を経過したいま、世界規模の環境問題や貧困問題へとスケールアップし、その影響はグローバリズムの中で深刻化しています。衛生管理が劣悪なまま都市化し、爆発的に人口が増えた当時のマンチェスターでは、労働者の平均寿命は22歳だったといわれ、その大半が貧困層や労働者層であったことは言うまでもありません。会場となった廃墟は、今や世界中に「パンデミック」した工場化と資本主義社会と労働、都市をベースにした社会システムに先んじて、犠牲となった貧困層約4万人が、墓標も棺桶もなく埋められた墓場です。この忘れられた地下の廃墟から密かに増殖するビール、おしっこ、ブリック、そして酔っ払いたちがプロジェクトを通じて放たれ、この度ノン-サイト(Non-Site)であるギャラリーでのインスタレーションとして結実します。ペストの媒介者として嫌われてきたネズミの中でも、都市で繁殖し殺鼠剤が効かなくなるほど進化した「SUPER RAT」を自分たちの肖像として捉え、また死の使いとして畏怖されるカラスを題材にした作品に、「BLACK OF DEATH」と黒死病を想起させるタイトルを付けてきたChim↑Pomにとって、このふたつのプロジェクトは、疫病と資本主義社会、そして都市の関係に触れてきた一連の流れにあるものです。Chim↑Pomの「都市論」は、公から個という昨今の東京のまちづくりに反して、個から公への回帰と刷新を念頭にした2018年ANOMALYでの個展「グランドオープン」からさらに発展し、移動が過度になったグローバリズムの最中にある「都市そのもの」と「人間の在り様」を提示します。

スケジュール

2020年6月27日(土)〜2020年7月22日(水)

開館情報

時間
12:0018:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日
備考
開館時間 12:00〜18:00
入場料無料
展覧会URLhttp://anomalytokyo.com/exhibition/may-2020-tokyo-a-drunk-pandemic/
会場ANOMALY
http://anomalytokyo.com/top/
住所〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 4F
アクセスりんかい線天王洲アイル駅B出口より徒歩9分、東京モノレール天王洲アイル駅南口より徒歩10分、京急本線新馬場駅北口より徒歩9分、JR品川駅港南口より都営バス「天王洲橋」下車徒歩4分
電話番号03-6433-2988
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