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[画像: 佐藤雅晴「Calling (ドイツ編、日本編) 」2009-2014/2018 アニメーション、ビデオ 14分(ループ)© Estate of Masaharu Sato / Courtesy of KEN NAKAHASHI]

佐藤雅晴 + 大垣美穂子 「尾行 —不在の存在 / 存在の不在」

KEN NAKAHASHI
終了しました

アーティスト

佐藤雅晴、大垣美穂子
*新型コロナウィルス感染拡大防止に伴う3月28日(土)からの休廊により、一時中断していた大垣美穂子と佐藤雅晴による二人展「尾行—不在の存在/存在の不在」を、6月3日(水)から6月14日(日)まで再開いたします。
事前予約をお願いいたします: https://airrsv.net/kennakahashi/calendar

KEN NAKAHASHIでは2020年3月13日(金)から4月11日(土)まで、大垣美穂子と佐藤雅晴による二人展「尾行—不在の存在/存在の不在」を開催いたします。

同世代で同時期にドイツのデュッセルドルフで学び、ドイツと日本でプライベート上のパートナーとしても活動を共にした大垣美穂子と佐藤雅晴。

佐藤雅晴は、KEN NAKAHASHIでの初となる個展「死神先生」の開催期間中である、2019年3月9日に、10年に及ぶ癌との闘病生活の末、死去しました。佐藤の一周忌にあたる時期に合わせ開催する本展では、大垣と佐藤の作品に共通している、不在と存在や、生前と死後などの相反する要素が内包されている特徴や、作品化する対象を自分の中に取り込み「尾行」しようとする側面に注目します。

2013年、くも膜下出血を発症し、闘病期間を経て病を克服した大垣美穂子は、立体、インスタレーション、ドローイング、映像、パフォーマンスなど多岐にわたるメディアによって、生きること、老いること、そして死について、その表象を作品上で費やすのではなく、自分自身の日々の暮らしに真摯に向き合いながら制作活動を行なっています。

デュッセルドルフ・クンストアカデミー在学中、3年におよぶ制作期間を経て、レインボービーズで表面を埋め尽くした乳母車と霊柩車を用いた連作、「before the beginning—after the end #1」(2003)と「before the beginning—after the end #2」(2003-2005)を発表しました。生まれる前に見るビジョンと死んだ後に見るビジョン—あるいは誰もが語り得ない領域—をテーマに何枚ものドローイングを描き、それらを連続させることで映像化し、乳母車と霊柩車内に設置したビデオ・サウンドインスタレーションです。乳母車の内側を覗き込み、または霊柩車の内部に身を横たえると、生まれる前と死んだ後に見るビジョンとサウンドが、鑑賞者の耳目に触れられる作品です。表面を覆う数え切れないほどのパールビーズの集合体は、外側からはきらきらと光り輝き、その存在を際立たせていますが、生や死の表象を内側に隠しています。作品タイトルにも、始まりの前と終わりの後というパラドックスが込められています。

無数の点が画面を覆い尽くすように描かれたペインティングシリーズ「Star Tale」(2012-2013)や「immortal moment」(2019)、そして老いていく身体などをモチーフにし、感情のメタファーとして無数の穴があけられ内蔵された光源によって銀河のように巧みに空間を照らし出す、立体インスタレーションシリーズ「Milky Way」も、自分自身の身体や、身近な存在の生や死に向き合い、生きていることの実感(メメントビブレ)と死を思うこと(メメントモリ)を確認する行為、言い換えれば写経のように無数の点でなぞり「尾行」するような行為だと言えるでしょう。

乳母車と霊柩車という2つの乗り物がなす対抗律や、立体作品シリーズMilky Wayの老いた身体の像が、暗闇では子供のような印象を鑑賞者に与えるという差延。このように、相反する要素を同居させることで、始まりと終わりが極限までいき連続する様や宇宙的なスケールの時間へと、鑑賞者を没入させていきます。

本展では、乳母車の作品「before the beginning—after the end #1」(2003)を再構成し発表します。

相反するものが共存する時間を鑑賞者に感じさせるという特徴は、実写をトレースし更に映像化された佐藤雅晴の「リアルでどこか奇妙」な作品にも共通しています。

佐藤雅晴は日本に帰国した2010年、歯の不調により診察した歯科医で撮影したレントゲン写真により、上顎に癌があることを発見しました。その後、度重なる手術や放射線治療、抗癌治療などを行う生活を送りながら、自分の身体がどうなっていくのかという個人的な現実問題として、生や死、絶望や希望、不在や存在ということに向き合い、作品を制作してきました。

佐藤にとってトレースとは、自身の暮らす土地、家族や友人、目の前に広がる風景への理解を深め、自分の中に取り込むというまるで「尾行」のような行為です。原美術館で発表した「東京尾行」(2016)は、トレースされた「虚」の世界と「実」の世界が交わり出力された映像作品ですが、とてもシンプルなアプローチにもかかわらず、見る人それぞれが、孤独や不安、ノスタルジーやユーモアを感じたり、様々な作品の解釈を導き出しました。誰もいないのに揺れ続けるブランコや、部屋の中で回転し続ける椅子など、不思議な映像があります。それらは、ある一定の動きをあたかも自然な運動のようにつないで、ループさせることで成立している映像ですが、そこには不穏な何かの存在が映されています。

誰もいない部屋や、日本の国歌が流れるカラオケボックなどで、ただひたすら鳴り続ける電話を描いた「Calling」(2009-2014/2018)、伊達巻がひたすら生産される過程を描いた「ダテマキ」(2013)、原発事故や津波で人がいなくなってしまった震災後の福島の風景を、癌に侵される中でも撮り続け、未完ながらも発表した「福島尾行」(2018)など、不在または存在というこれらの作品に込められた互いに拮抗するテーマは、佐藤の映像作品に潜む不気味さでもあり、混迷する世の中を象徴し、私たちを自身の日常に立ち返らせる指標にもなっています。佐藤によって提示されたこれらの作品の中の風景に、私たちはどのような存在を見出していくのでしょうか。

本展では、佐藤雅晴の代表作の一つであり2019年に森美術館で開催された「六本木クロッシング2019展: つないでみる」でも発表した作品「Calling (ドイツ編、日本編)」(2009-2014/2018)と、約4年の制作期間を経て、2008年5月、六本木にかつてあった住宅展示場で開催され、佐藤の日本デビューとなった展覧会「第4回 団・DANS ―The House―現代アートの住み心地」で初めて発表された作品「TRAUM」(2004-2007)を組み合わせ、展示空間を構成します。

スケジュール

2020年6月3日(水)〜2020年6月14日(日)

開館情報

時間
13:0020:00
休館日
日曜日、月曜日
備考
事前予約制、月曜日・火曜日休廊、土曜日・日曜日は17:00まで
入場料無料
展覧会URLhttps://kennakahashi.net/ja/exhibitions/trace-presence-of-absence-slash-absence-of-presence
会場KEN NAKAHASHI
https://kennakahashi.net/
住所〒160-0022 東京都新宿区新宿3-1-32 新宿ビル2号館5F
アクセス東京メトロ丸ノ内線・副都心線・都営新宿線新宿三丁目駅C1またはC5出口より徒歩2分、JR新宿駅東南口より徒歩6分
電話番号03-4405-9552
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