洋画史のスターたちの中で、若死にした画家が占める割合は驚くべきものがあるが、28歳で世を去った青木もそのひとりである。「海の幸」(1904年)は22歳の時に、房総半島の布良海岸で描かれた。二十過ぎの若者が描いた絵だと思うと、気軽に「傑作」とか「名作」と呼ぶことがためらわれる。
放浪生活の末に夭折したこともあってか、青木繁には浪漫主義的という形容が常につきまとう。しかし、青木の作品の特徴としてあげられる、神話的な主題や、情感が込められた色彩などは、時代に共有された関心でもあった。浪漫主義的に生きれば、浪漫主義の絵が描けるというわけでもなかろう。「海の幸」の背景に透けるグリッド線が、青木の創作行為の理知的な側面を象徴しているといったら言い過ぎだろうか。
ところで、2003年に東京国立近代美術館で開かれた「青木繁と近代日本のロマンティシズム」展で初めて「海の幸」を見たとき、想像していたのよりもずっとこじんまりとしていて意外に思ったのを覚えている。今回久々に目にして、改めて小さく感じた。壁画を思わせるモニュメンタルな構図のためか、記憶の中でどんどん巨大化していく不思議な絵でもある。まだ実物を一度もご覧になったことがない方には、ぜひ京橋まで足を運ばれることをお勧めしたい。


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