公開日:2007年6月20日

イサム・ノグチ展

イサム・ノグチが生涯をかけて夢見つづけた広大な彫刻作品、《モエレ沼公園》が没後17年の時を経て、今年7月にグランドオープンを迎えた。

計画の原案は大戦前後、日米ふたつの祖国が争う中で構想されている。ノグチがこの時期に手がけた《プレイ・マウンテン》などの大規模な公共プロジェクトのデザインは、いずれも実現されなかったが、その後数十年に渡って構想は彼の胸中で温められ、《モエレ沼公園》のマスタープラン完成へと繋がっている。《モエレ沼公園》の誕生を記念して開かれた「イサム・ノグチ展」は、《エナジー・ヴォイド》《あかり》《グレゴリー》はじめ、彫刻の活動をはじめた二十代から晩年までの代表作を一同に、ゆったり鑑賞できる。展示の構成や間隔のゆとりが心地よかった。

ところで、皆さんは美術館のオーディオガイドを利用されるだろうか。私は個人的に、鑑賞の妨げになるようで、あまり好きではなかった。「作品」と「私」のあいだに第三者の声が介入するのでは、まったく集中できない。

ただ今回はこの記事を書くにあたって、しぶしぶオーディオガイドを利用したのだが、よかった。ノグチの言葉ないし人生が語りうるメッセージが、作品と共鳴し、とてもよく響く。と思った。もちろん語り手は声が美しい、作品とゆかりなさそうな女性だったけれど‥ 自身の若き日の抽象彫刻について振り返る言葉が印象に深い。

Ikuko Kohno

Ikuko Kohno

インデペンデント・キュレーター 1982年生まれ。東京在住。