公開日:2007年6月18日

ヴィヴィアン・ウエストウッド展

「素敵な服は、素敵な場所へ連れて行ってくれる。素敵な経験と人生を、あなたに選ばせる。」と、迷いなくヴィヴィアン・ウエストウッドが言い、あなたは納得して、ぴんと張った綱を渡る。転げて落ちないよう、慎重に。挫けないよう、堂々と。

「ファッションは綱渡り。馬鹿にされることを恐れずに、もし綱の上を歩き続けることができたら、すべては拍手喝采に変わるのよ。」

2004年の春、ロンドンのヴィクトリア&アルバートミュージアムで開催された展覧会『ヴィヴィアン・ウエストウッド展』は、春が過ぎてもなお、惜しまれて開催期間を延長、ロンドンの美しく揺るぎないパンク魂へのオマージュとして、また、その精神を21世紀へ引き継ぐ公的なセレモニーとして、あまりにも爽やかなヴィヴィアンのポートレイトとともに、ロンドンの街を、半年近くの間彩色した。

展示空間は、クロニクルに二つに区切られ、明るい照明で強いスローガンが目立つ「The Early Years」と、艶やかな明かりに成熟したドレスが並ぶ「Maturity」に分かれた。ヴィヴィアン・ウエストウッドという女性自身と、彼女を巡る同志のつながり、彼女が置かれ、作り上げた環境、そのアイデアの資源が、充分な数のドレスと、充分な数の彼女の言葉が引用された丁寧な文章で綴られていく。そんなに大きくはない会場に、愛され理解され支持されたデザイナーの展覧会であることが、隅々まで感じられるような、心のある構成が繰り広げられる。加えて、豪奢なパーティがファッションの華麗で心をさらえば、洋服作りのプロセスを見せたり、紙で洋服を作るような、幾つものワークショップやレクチャーが、愛されて通われる装飾美術館の下地環境を、支え整えた。

若さ特有の反骨精神と潔い身振りが、一定の強度を保ち反復され、ストリートを鳴らし、時代を轟かし、脅かし、一巡りして一国の文化を深める新しいひだとなり、不動の価値ある美意識として愛されるまで。
その間に一巡りして60歳を超えたヴィヴィアンは、今も、愛犬を籠に入れて、サウス・ロンドンを自転車で走る。「いつも、通ったことのない道を通りたいと思っているのよ。」とヴィヴィアンが言い、あなたの好奇心が疼く。文化は所詮、日常へ返還される。あなたの若い好奇心が、文化へ至る可能性を秘めているのもまた同じ。

ロンドンという土壌で育った、正真正銘のストリートカルチャーというコンテクスト、“由緒正しき”装飾美術館ヴィクトリア&アルバートミュージアムというコンテクストが抜け落ちて、東京で見るヴィヴィアンのポートレイトが、様相違って見えるのは仕方のないこと。彼女のドレスに会うのに、あなたにいつもと違う道を通るすべはなく、キーンと軋む耳をぐっと堪え、エレベーターでまっすぐ52階へ昇る。52階はストリートから少し遠く、文化を香るには見晴らしがよすぎる。彼女のオレンジ色の髪は、晴れた東京の冬空にも、同様に明るく、その洋服と姿勢は、同様に清々しく、ストリートを歩くあなたの心を捉えて離さないのだけど。

こちらで、ヴィクトリア&アルバートミュージアムでの展覧会内容が、細かく再現されているので、東京展の補足と参考に。

Megumi Matsubara

Megumi Matsubara

Founder of assistant Co., Ltd - international &amp; interdisciplinary design practice. ロンドンにてピーター・クックに学び、バートレット建築学校を修了。assistantでは、国内外のアーチストおよびクライアントと協力し、領域や国境から解放された、自由なクリエイションを展開している。 <a href="http://www.withassistant.net/">assistant Co., Ltd</a>