公開日:2007年6月18日

カルティエ現代美術財団コレクション展

「巨大さ」、これは現代アートの一大特徴と言えるかもしれない。それは、ロイ・リキテンシュタインの漫画のカットアップや、ジェフ・ウォールの写真など、ジャンルを問わずに普及してきた流れを見ても分かる。しかし、今回の展覧会の作品を詳細に見ていくと、その「巨大さ」という特徴にも各々ばらつきがあるように感じられる。

会場入ってすぐのところにあるライザー・ルーの作品は、ほぼ原寸大の「庭」を全てビーズで表現したものである。また、マルク・クチュリエの作品は、オレンジの木を様々な材質で再現しており、これもまた原寸大に近いものとなっている。この両作品に共通するのは、そのもの本来の大きさを縮尺も変えずに再現することによって生じる「巨大さ」である。

一方、ロン・ミュエクの作品は、極めて精巧に作られた、通常の人間の大きさを遥かに越えた女性像である。また、トニー・アウスラーの作品は、非常に大きな球形のスクリーンに人間の目玉を映し出したものであり、これもまた人間の目の大きさを遥かに逸脱している。この二つの作品にある共通点は、通常の縮尺を遥かに超えた規格外の「巨大さ」である。

このように、大きさだけで見れば、上に挙げた諸作品はそれほど違いがないように感じられるが、それぞれが示す「巨大さ」のニュアンスは全く異なる。そう考えると、この展覧会に出品されている他の作品に関しても、また違った「巨大さを発見」できるかもしれない。そう、新たな「巨大さ」の発見は、あなたの眼にかかっているのである。

Bunmei Shirabe

Bunmei Shirabe

Graduate student of Aesthetics - Tokyo University 1980年生まれ。写真、球体関節人形(ハンス・ベルメールなど)の研究。今現在、<a href="http://www.pg-web.net/index.html">photographers' gallery</a>中のoff the galleryにあるRevised Editionにて執筆中。またブログ<a href="http://d.hatena.ne.jp/BunMay/">「入院(完了)生活」</a>にて毎週日曜に写真集批評を継続中。