イザベル・ユペール展 Woman of Many Faces

タイトルと内容を初めて目にしたときは、軽い冗談のように感じた。「フランスの女優イザベル・ユペールだけを被写体に、72人の写真家が撮影したポートレイトを集めた展覧会」と言われても、ちっともピンと来なかった。

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イサベル・ユペール展

恵比寿、代官山エリアにある
東京都写真美術館にて
このイベントは終了しました。 - (2006-07-01 - 2006-08-06)

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イサベル・ユペール展

恵比寿、代官山エリアにある
東京都写真美術館にて
このイベントは終了しました。 - (2006-07-01 - 2006-08-06)

In レビュー by Megumi Matsubara 2006-07-04

彼女が素晴らしい女優だという事実と、数々の著名な写真家が撮った彼女のポートレイトは、一緒にすると、どちらの価値も下がるような気がしたのだ。

でも気になって、もらった案内を何度も眺め、展覧会の様子をなんとなく想像してみた。意外にも、想像すればするほど、その展覧会はずいぶんと美しいものに感じられた。だってよく考えてみれば、その女優は他の誰でもなく「イザベル・ユペール」、『ガラスの仮面』の主人公のような彼女なのだから。
好奇心が湧き、どうしても見てみたくなったので足を運ぶと、地下の会場はシンとして、冷たい湿り気のある空気を溜め込み、ユペールの体温のような趣きがあるのだった。ぐるりと一周ユペールの写真が囲み、半分ほど見てふと、そのひとつとして彼女の口が開いている写真がないことに気づく。にこりともしないその写真の数々からは、彼女がどんな女性なのかはまるで推測できそうにない。ましてその日、彼女本人が会場の真ん中に佇み、あの神経質そうなまっすぐの背筋と低い声で客人たちと話していたので、等身大に(あるいはそれより大きく)映し出された2つの彼女の姿を眺めながら、スクリーンの中で咳をする彼女の喉の音と、真後ろで談笑する低い声に挟まれて、おかしな気分になるのだった。

映画という、切り取られた2時間の物語から、さらに切り取られた一瞬として、カメラの捉えた女優の顔からは、ヒストリーや前後関係を読み取るのが困難で、人間らしいリアリティが削られたような不自由さがある。その不自由は、そのまま「女優」のリアリティに昇華し、この展覧会には、張りつめた美しさに、ちょっとした哀愁さえ漂っているのだった。

Megumi Matsubara

Megumi Matsubara. Founder of assistant Co., Ltd - international & interdisciplinary design practice. ロンドンにてピーター・クックに学び、バートレット建築学校を修了。assistantでは、国内外のアーチストおよびクライアントと協力し、領域や国境から解放された、自由なクリエイションを展開している。 assistant Co., Ltd ≫ 他の記事

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