「時光 − 蔡國強と資生堂」展

「火薬の爆発」という技法によって確立してきた深い哲学

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「時光 − 蔡國強と資生堂」展

にある
資生堂ギャラリーにて
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Cai Guo-Qiang《99 Golden Boats》Suzhou Museum, China, 2006

資生堂ビルの地下にあるギャラリーに行くには、アプローチの方法が2つある。一つは、中央通りに面した入り口からエレベータで行く方法。もう一つ は、花椿通りに面した入り口から階段を降りて行く方法。今回、後者の花椿通りから入り、階段を降りて行くと、その途中から、マッチを擦ったような香ばしい 火薬の香りがした。火薬を爆発させて制作された絵画は、爆発時のエネルギーを未だ紙の上に留め、空気中に発散させているかのようだ。

長年蔡國強の活動を支援してきた資生堂での展覧会ために制作された4点の大きな絵画は、それぞれ春夏秋冬を表す。焦げた火薬によって、まるで山水画 のように繊細に表現された、清流を泳ぐ魚やカニたち。しかし画面全体としては、焦げて飛び散った火薬の痕跡がとてつもないエネルギーを秘め、まさに迫力 に満ちている。

一枚の画面の中に表現された、爆発の持つ二面性。つまり、爆発は、「宇宙の誕生の根源に繋がるパワー」と、「生きとし生けるものを一瞬のうちに破壊するパワー」の両方を併せ持つということ。

「人間は物体としてこの時空に存在することに不快を感じ、沸き起こる欲望を火薬という暴力的な手段によって外に発散し処理してきた。私は暴力がすべてを創造し、またすべてを破壊したことをよく知っている。」とは蔡自身の言葉。

爆発は創造と破壊の双方の極点にあるという点に着目した蔡が、「火薬の爆発」という技法によって確立してきた深い哲学が見えてくる。

会場奥の部屋で上映されている映像には、今回展示されている4点の作品の制作過程が収められており、「なるほどこうやって制作されたのか」と見るこ とができ興味深い。また、火薬による作品の他に蔡國強が行ってきた、薬草や気功などの東洋医学、風水などを取り入れたヒーリングの作品も紹介されている。

そして、展示空間の高い天井に向かって、螺旋を描きながら漂う黄金舟。それは、一人の人間の一生も、太古からの地球の歴史の中では爆発と同じ刹那の出来事であることを思わせる。
パワーと緊張感を孕んだ展示空間の中で、アーティストがアートを通して「どんな作品を作るか」よりも、「作品を作ることで何ができるか」ということを考えさせられた展示であった。

Rei Kagami

Rei Kagami. 1975年生まれ、東京都在住。大学卒業後、働きながら2005年武蔵野美術大学通信教育課程にて学芸員資格取得。2005年夏より、アートの仕事に従事。 ≫ 他の記事

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