混沌から躍り出る星たち 2007

アートにおける学校教育の現場を垣間見ることができたトークイベントをレポート

poster for Kyoto University of Art & Design 30th Anniversary

京都造形芸術大学 30周年記念 「混沌から踊り出る星たち2007」

表参道、青山エリアにある
スパイラルにて
このイベントは終了しました。 - (2007-07-27 - 2007-08-11)

In Main Article 2 レビュー by yumisong 2007-08-07

会場風景

京都造形大学の卒業生の選抜展として2001年から開催されたこの展覧会は、今回で7回を向かえます。

初日727日のトークイベントで、名誉学長の芳賀徹氏は「とんこつラーメン食べたからって、アーティストにはなれないよ。」と少なく見積もっても、5回はおっしゃっていました。「こんとん」から「とんこつ」だそうで(笑)。とんこつラーメンで育ったアーティストが聞いたら怒るか笑うかは知りませんが、学校が持つ「混沌」と学生が持つ「混沌」を増幅させて、そこから「躍り出る」ような作家(星)を作りたい、価値をやぶっていくエネルギーが重要だ。作品には時間的なスクリーニング、価値のスクリーニングが必要だという話をされていました。

トークイベント風景また学校教育には珍しく「売る」ということにも重きを置いていて、トークイベントでもぜひ作品を買っていってくださいというようなお話を冗談交じりではありますが、何度も話されていました。トークイベントのゲストがシンワアートオークションの代表取締役の倉田陽一郎氏だったというのも、その現れかもしれません。売ることを重要視しているのは「マーケットに乗る作家」というのが対外的に見て信頼の一つにもなるし、自分は売れたというのが作家自身の自信にも繋がってよい作品を生み出すからのようです。

そういえば今回の展示は値段こそ付いていませんが、買えそうな作品ばかりです。(かなもりゆうこの「telepathy」はインスタレーション作品ですが)一回限りのインスタレーションや持ち運び不能な作品などは少なく、誰かが買ったり他の展覧会に持っていくことが可能な作品がほとんどでした。昨今の「アートバブル」の影響が早くも学校教育にも出ているのでしょうか。

そして興味深かったのは、才能があっても売れるとは限らない。と言いながらも50年以上も素晴らしい作品を見続けているので、私がよいと言ったものは確かだ、安心しなさい。という内容の話を同時にされていたことです。歴史観と学生に対する励ましの感情が交互に入れ替わっているようでした。学校教育って面白いですね。他の出演者の方々(後藤繁雄、椿昇、倉田陽一郎)も、みなさん個性的で熱いお話をされていて、作家にとってもマネージメントを志す方にとっても充実したトークショーだったのではないでしょうか。

ただ終始、絵画の話だけになってしまっていたのは残念でした。絵画ではないジャンルの作家も出展していますし、絵画が生き残る可能性が高いといっても生き残るための戦略を教えてもらって制作意欲が湧くのではなく、制作をしていく上で自分の戦略を勝ち得るのではないかなと思うからです。それと考え過ぎかもしれませんが生き残るのがアートの使命と思ってしまうような危機感も話を聞いていて少し感じました。その場だけで強烈に有効な、形の無い芸術も世界が必要としているのではないでしょうか。ただし学校としては長く生き残る作家が必要だとは思います。

とにかく全体を通しての印象は、学校として戦略や想いが大きいぞ!どんどん前に出て行くぞ!という意思の現れ。この学校に入ったら何か得られるのではないか、未来が開けるのではないかという気持ちになりそうです。

今回の展覧会は、そのような学校方針で育った学生や卒業生が展示をしている展覧会です。選抜生12名に加え、イチハラヒロコ、できやよいなどの活躍中の卒業生13名、合計25名による展覧会です。みなさん丁寧な仕事をされています。活躍している作家の方が選抜生より多いので卒業展という感じではありませんし、作品を見ただけでは選抜生と作家の区別がつかない作品もあります。

特に梶岡俊幸《暗流》は293.0×732.0cmという大きさもさることながら黒い闇の中の川面の描写が圧巻です。カフェのあたりから見ると、無感情が流れだして私たちを巻き込みながら何処かへさらっていきそうです。安冨洋貴《循る雫》もケント紙に鉛筆で水面に水が滴る写実的な描写ながらも情念というか感情が多く書き込まれていて、筆跡の隙間から個人的な秘密が見えそうで少し怖いような覗きたくなるような気分になります。

可能なら学校教育の成果と作家の成果、直接みなさんの目で確かめてもらえたらと思います。

yumisong

yumisong. ふにゃこふにゃお。現代芸術家、ディレクター、ライター。 自分が育った地域へ影響を返すパフォーマンス《うまれっぱなし!》から活動を開始し、2004年頃からは表現形式をインスタレーションへと変えていく。 インスタレーションとしては、誰にでもどこにでも起こる抽象的な物語として父と自身の記憶を交差させたインスタレーション《It Can’t Happen Here》(2013,ユミソン展,中京大学アートギャラリーC・スクエア,愛知県)や、人々の記憶のズレを追った街中を使ったバスツアー《哲学者の部屋》(2011,中之条ビエンナーレ,群馬県)、思い出をきっかけに物質から立ち現れる「存在」を扱ったお茶会《かみさまをつくる》(2012,信楽アクト,滋賀県)などがある。 企画としては、英国領北アイルランドにて《When The Wind Blows 風が吹くとき》展の共同キュレータ、福島県福島市にて《土湯アラフドアートアニュアル2013》《アラフドアートアニュアル2014》の総合ディレクタ、東海道の宿場町を中心とした《富士の山ビエンナーレ2014》キュレータ、宮城県栗駒市に位置する《風の沢ミュージアム》のディレクタ等を務める。 → http://yumisong.net ≫ 他の記事

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